目次
祖母の遺品
マリコは亡くなった祖母の家を片付けるため、久しぶりに田舎の古い家を訪れた。祖母はアンティークが好きで、家には古い家具や骨董品が数多く並んでいた。中でも、一つのアンティーク人形が目を引いた。それは、繊細な顔立ちと青い瞳を持ち、絹のドレスを着た美しい人形だった。
「こんな人形があったなんて……」
マリコは思わずその人形を手に取った。冷たい陶器の感触が肌に伝わり、なぜか背筋に冷たいものが走る。だが、不思議な魅力を感じたマリコは、その人形を家に持ち帰ることにした。
家に戻ると、飼い猫のミミが玄関で待っていた。しかし、人形を持ち込んだ瞬間、ミミの態度が急変した。毛を逆立て、低くうなり声を上げて人形から距離を取る。
「どうしたの、ミミ? そんなに怖がらなくてもいいのに」
ミミはマリコの言葉を無視し、目を細めて人形をにらみ続けた。
初めての異変
その夜、マリコは人形をリビングの棚に飾り、疲れからすぐに眠りに落ちた。深夜、部屋の隅でミミが激しく鳴き始めた声にマリコは目を覚ました。ミミはリビングの方に向かって唸り声を上げ、尻尾を大きく振りながら後ずさりしていた。
「またなの? 一体どうしたの……」
不安を覚えながらも、マリコはリビングへ向かった。そこには、人形が棚から落ちている姿があった。倒れた人形の目が、床の上からマリコを見上げているように光って見えた。手足が微かにズレており、まるで自分で動いたかのようだった。
「落ちただけ……だよね?」
マリコは自分に言い聞かせるように人形を元の位置に戻したが、ミミは相変わらず興奮したまま、目を離さずに見つめていた。
さらなる恐怖
次の日、帰宅したマリコは、家中に奇妙な引っかき傷が増えていることに気がついた。壁や家具に細い線がいくつも走り、どこか人形の細い指の跡のように見える。ミミはその日も興奮を隠せず、人形の前に立って唸り声をあげ、何かを警告するかのようだった。
「ミミ、大丈夫だから……怖がらなくていいよ」
しかし、夜になると再び異変が起きた。寝室のドアがギィと音を立てて開くと、廊下の奥からかすかに小さな足音が聞こえてきた。ミミは急に跳び起きてマリコのベッドの上に乗り、じっと廊下を睨みつけていた。
足音は次第に近づき、やがてリビングの方で何かが動く音がした。恐る恐るリビングへ行くと、そこには人形がいつの間にか別の場所に移動していた。人形の目が月明かりを反射し、薄暗い部屋で不気味に輝いていた。
その時、ミミが低い唸り声を上げて人形に飛びかかり、人形を倒した。ドレスが裂け、陶器の中から古びた紙片がこぼれ落ちた。
真実のメッセージ
マリコは震える手で紙片を拾い上げ、薄暗い光の中でその文字を読んだ。紙には、かすれたインクでこう書かれていた。
「私はここに閉じ込められた。見つけた者は、この呪いを解いてください。」
その夜、ミミはマリコの横で眠るように寄り添い、低く鳴きながらもマリコを守るように見張っていた。マリコはその紙片をすぐに燃やし、翌日には人形をアンティーク店に戻した。
終わらない警告
しばらくして、家の中は静けさを取り戻したように見えた。しかし、ミミは時折夜になるとリビングをじっと見つめ、耳を立てていた。マリコも、その視線の先に何があるのか考えるたび、鳥肌が立つのを感じていた。
「本当に……終わったのかしら?」
そして、その問いに答える者は誰もいなかった。
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