ある夏の日、僕は家の中を片付けていた時に、物置の奥から古い双眼鏡を見つけた。子供の頃、祖父が使っていたもので、手に取ると懐かしい気持ちになった。双眼鏡は古びているものの、しっかりとした作りで、レンズはまだ澄んでいた。
その夜、何となくベランダに出て星空を見上げていた。星がはっきりと見えるような夜で、双眼鏡を手にした僕は空を覗いてみた。レンズ越しに見える星々は鮮明で、その輝きに心が少し安らいだ。
目次
不可解な影
ふと、視線を少し移動させると、遠くの古いアパートが目に入った。そのアパートは長い間空き部屋が多く、薄暗い雰囲気を漂わせていた。冗談半分で、そのアパートの窓を双眼鏡で覗いてみることにした。
最初は特に何も見えなかった。家具もほとんどなく、がらんとした部屋が続いている。しかし、一つの窓で僕は手を止めた。暗闇の中、何かが微かに動いた気がしたのだ。レンズを凝視すると――人影が窓の隅でこちらを見つめていた。
驚いて双眼鏡を下ろし、裸眼で見てみたが、その部屋は暗闇の中に沈んでいた。見間違いだろうか、と自分に言い聞かせて再び双眼鏡を持ち上げると、影は消えていた。
夜の来訪者
その夜は何とか眠りについたが、深夜にふと目が覚めた。窓の外から、何かが動くかすかな音が聞こえた。風のせいかと思っていたが、ベランダに誰かがいるような気配がした。
恐る恐るカーテンを少し開けると――そこには、双眼鏡を持った黒い影が立っていた。顔は見えないが、明らかにこちらを見つめている。その双眼鏡のレンズが、月明かりに鈍く光っていた。
心臓が凍りつくような恐怖を感じ、体が動かなかった。影は何も言わず、ただじっと僕を見ている。しばらくして、影はふっと消え、外には何の音も残らなかった。
再びの朝
朝を迎えても、心の中には恐怖が渦巻いていた。双眼鏡を捨てるべきか迷ったが、何かに囚われているようで手放すことができなかった。夜が来るたびに、窓を開けるのが怖くなり、視線を感じるときもあったが、その影は現れることはなかった。
それ以来、僕は双眼鏡を使うことがなくなったが、たまに物置でその古びた双眼鏡を見ると、背中に冷たいものが走るのを感じる。
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