放課後、ケンジとショウタ、ユウタの3人は遊び半分で「猫屋敷」と呼ばれる廃屋にやって来た。町外れに建つ古い木造の建物で、屋根の一部は崩れ、壁もところどころ剥がれている。風が吹くと、屋根板がギシギシと音を立て、周囲には異様な静けさが漂っていた。
「ほんとに、ここに入るの?」とユウタが怯えた声で言った。
「馬鹿、外から覗くだけだって。さすがに中には入らないよ」とショウタが軽く笑って答えた。
3人は猫屋敷の窓から中を覗き込んだ。
廃屋の中には、薄暗い日差しが差し込む中、無数の猫がいた。黒猫、白猫、三毛猫、様々な色の猫が所狭しと座り、じっと何かを見つめている。普通の猫と違って、どの猫も揃って目を見開き、鋭く光る瞳で扉の方をじっと見つめているようだった。
ケンジが囁くように言った。「おい、なんか猫たち、ただの猫じゃない気がするんだけど……」
猫たちは、一匹一匹が確かにこちらを見ている。いや、ただ見ているのではなく、何かを知っているような、こちらの考えを見透かしているような視線だった。
「な、なんかおかしい……」ユウタがつぶやいた瞬間、黒猫の一匹がふわりと立ち上がり、前足を一歩踏み出した。
それをきっかけに、猫たちは一斉に動き始め、まるで周りにいる猫たちと密かに連携を取るように、整然とした動きで集まってくる。
「おい、帰ろう! なんかやばいって!」ショウタが恐怖で声を震わせた。
ケンジが振り返って逃げようとした瞬間、背後から微かな囁き声が聞こえてきた。
「おい、今、誰か喋った?」
「何言ってんだよ!猫が喋るわけないだろ!」ショウタが青ざめた顔で否定したが、その時、再び囁きが聞こえた。
「何しに来た……ここは、お前たちの来る場所ではない……」
振り返ると、猫たちが屋敷の奥から一列に並びながら、ゆっくりと近づいてきている。目の奥には、人間のような強い意志が宿っている。まるで、彼らがこの屋敷を守る主であるかのような気配が、少年たちにじわりと伝わってきた。
恐怖がピークに達したその瞬間、ショウタが叫んだ。「も、もう無理だ!逃げるぞ!」
3人は全速力で走り出し、猫たちから距離を取るように屋敷を離れた。屋敷から50メートルほど逃げて、ようやく振り返ると、猫たちは一匹も追いかけてこなかった。だが、窓辺にはさっきの黒猫が座り、じっとこちらを見つめている。その瞳には、冷たい知識と何か暗い決意が宿っているかのようだった。
「二度と近づくな……」
その時、誰が言ったのか分からない声が、少年たちの脳裏に響き渡った。
それ以来、誰もその猫屋敷に近づこうとしなくなった。近所の人々も、廃屋を気味悪がり避けるようになり、やがて猫屋敷は本当の意味で、誰も寄り付かない「猫たちの聖域」となっていったという。
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