仕事の出張で訪れた町の、少し古びたホテルに宿泊することになった。ロビーにはアンティークなインテリアが並び、どことなく古い映画に出てきそうな雰囲気だ。部屋に案内されると、最初に目についたのはベッドの正面に置かれた大きな鏡だった。
鏡の縁は暗い色の木枠で、ところどころくすんだ金の装飾が施されている。重々しい雰囲気を放っている鏡だが、わざわざ動かすこともできないので、仕方なくそのままにしておくことにした。
目次
夜中のノック音
疲れていたため、早めにベッドに入ったが、深夜にふと目が覚めた。部屋の中はしんと静まり返り、時計を見ると午前2時を過ぎている。眠気が戻るのを待ちながらぼんやり天井を見つめていると、コン…コン…と、どこからかノック音が聞こえてきた。
その音は遠くから響いてくるようだったが、次第に近づいてくるのがわかった。ノックの間隔はゆっくりで、まるで重いドアを叩いているような音だ。やがてそのノック音が部屋のドアの向こうで止まった気がした。
「……誰だろう?」
不安に駆られながらも恐る恐る耳を澄ませるが、次のノックが鳴らない。しばらくの静寂の後、今度はチリン…チリン…という鈴の音がどこからか聞こえてきた。
鏡の中の異変
ベッドから起き上がり、音の出どころを探そうとするが、鈴の音はまるで部屋全体に響いているようだった。そしてふと、鏡が目に入った。
「……気のせいか?」
鏡の中に映る自分を確認しようとじっと見つめていると、奥の方で何かが動いた気がした。鏡の中の自分の背後――ベッドのそばに立つ、かすかな人影。薄暗い影は、まるでぼんやりとした輪郭だけを残して消えた。
胸騒ぎがして視線を戻すが、当然部屋には誰もいない。しかし、鏡を覗くたびに、背後に見える影が少しずつはっきりしている気がしてならない。鈴の音は次第に重なり、頭の中に響き渡るようになった。
近づくノック音と鈴の謎
もう一度鏡を見ると、今度は自分の肩越しに何かが映り込んでいた。ぼんやりとした顔、そして、その影が僕の肩に手を伸ばし……その瞬間、再びコン…コン…とノック音が響き渡った。今度はすぐ近くだ。部屋のドアではなく、鏡の向こう側から響いている。
次に鏡からチリン…チリン…という音が鳴った。
鏡の中の影は、鈴の音と共に僕を見つめる。心臓が激しく脈打ち、動くことができないまま、鏡を見続けるしかなかった。影はゆっくりと、まるで苦しげな表情を浮かべながら、鈴の音と共にノックを繰り返している。
消えない鈴の音
恐怖に耐えかね、僕は部屋を飛び出した。ホテルのフロントに駆け寄り、従業員に事情を話すが、彼は疲れた表情で首を振った。
「何か部屋に不満なことがありましたか?部屋変えますよ」
そう言って、私の言うことは信じていないようだった。
僕はすぐに、別の部屋へ変えてもらった。
しかし、夜になるとコン…コン…というノッコの音とチリン…チリン…という鈴の音が聞こえる気がして、眠れなかった。
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