僕は夏休みに、リゾートバイトで山奥のペンションに泊まり込みで働くことにした。海の近くのリゾート地は人気で埋まっていたが、この山奥のペンションは静かで景色も良いので、休憩中に散策するのも悪くない。
そして、数日が過ぎて迎えた初めての夜勤の日。フロントで一人で見回りや清掃をしながら、深夜のシフトをこなすことになっていた。
目次
夜中の客
夜も更けた午前2時、ロビーで軽くうたた寝をしていると、ふいにペンションの玄関ドアが開く音がした。こんな夜中に客が来るなんて珍しい。宿泊客は数名しかおらず、深夜にフロントに来ることはないはずだった。
「……いらっしゃいませ?」
しかし、フロントに立っても誰も現れない。玄関を見渡しても、そこには人気がなく、静けさが広がっている。
(気のせいか……?)
不安を感じながらも気を取り直し、またフロントに戻ると、次は廊下の奥からカタ、カタという足音が響いてきた。音の方に目を凝らすが、そこには誰もいない。ただ、足音だけが遠ざかったり近づいたりしている。
奇妙な部屋
その後も不気味な気配が続き、ふと宿泊客がいないはずの「3号室」に明かりが灯っていることに気がついた。今夜その部屋は空き部屋のはずだ。不安を感じながらも確認しに行くべきか迷ったが、フロントとして無視するわけにはいかない。
廊下を進み、3号室のドアをノックする。
「失礼します。フロントです」
応答はない。手をかけてゆっくりとドアを開けると、部屋は静かで誰もいない。しかし、なぜかベッドの上には掛け布団が乱れており、まるで誰かが眠っていたかのようだった。
(おかしいな……)
その時、背後からカタカタと足音が近づいてきた。振り返ると廊下は薄暗く、廊下の奥に立つ人影がぼんやりと浮かび上がっている。見覚えのないその姿に息をのんだが、影はそのまま消え去り、静寂だけが残った。
何かがいる気配
夜勤を終え、朝を迎えた僕は先輩スタッフに昨夜の出来事を話したが、笑って聞き流されてしまった。
「このペンション、夜中にいないはずの宿泊客が見えることがあるんだ。ほら、昔ここで亡くなったお客さんがいるって噂があってさ」
半信半疑だったが、その後も夜勤のたびに誰もいないはずの3号室に明かりがつき、足音が廊下を歩く音が聞こえることが続いた。
今でも夜勤中、ふと気を抜くと3号室に視線を向けてしまう自分がいる。そして、その夜もまた廊下からカタ、カタと足音が聞こえるたびに、全身が緊張でこわばるのを感じる。
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