冬も近づいたある日、雪が舞い降り始めた頃、里美は久しぶりに祖母の住む田舎を訪れた。祖母の家は山あいの小さな村にあり、周りは見渡す限りの山と広い畑に囲まれている。静かで澄んだ空気に包まれたこの村は、日常の喧騒を忘れられる里美にとっての特別な場所だった。
夜も更け、里美が一人で縁側に座っていると、どこからか「チリン、チリン」と小さな鈴の音が聞こえてきた。静まり返った夜の中で、まるでどこか遠くから響いてくるような不思議な音。けれど、その鈴の音には冷たさはなく、どこかほっとするような温かさを感じた。
「この鈴の音……なんだろう?」
思わず立ち上がり、外を見渡すが、誰の姿も見えない。辺りは静かで、ただ雪がしんしんと降り積もっているだけだった。けれど、確かにその「チリン、チリン」という鈴の音は、里美の心に穏やかな響きをもたらしていた。
その時、背後で祖母が声をかけた。
「里美、その音が聞こえたのかい?」
「うん、なんだかほっとするような音だったよ。でも、不思議ね、どこから聞こえてくるのか分からないの。」
祖母は少し微笑んで、小さな鈴を手に里美に見せた。それは昔から祖母が持っていた鈴で、柔らかな音色が特徴的だった。祖母はその鈴を見つめ、懐かしそうに話し始めた。
「この鈴の音はね、心が疲れた時にだけ聞こえてくるんだよ。おばあちゃんもね、若い頃はよくこの音に救われたんだ。忙しくて辛い時、この鈴の音が心をほっと温めてくれるんだよ。」
里美はその鈴をじっと見つめ、音が持つ温かさを感じた。都会で忙しい日々を過ごしていた中で、自分がどれほど心の癒しを求めていたのか、今さらのように気付かされた。
「不思議ね……ただの音なのに、心がふわっと軽くなる感じがする。」
祖母は微笑みながら、そっと里美の手に鈴を握らせてくれた。
「里美が帰ってしまう時、この鈴を持って行くといいよ。辛い時や寂しい時、きっとこの音が、里美をそっと包んでくれるからね。」
里美は鈴を握りしめ、その温かさが心に沁み渡るような気がした。それからの日々、都会での忙しさに疲れた時には、その鈴を耳に当てて音を聞くと、不思議と心が穏やかになった。そして「チリン、チリン」と響くその鈴の音が、彼女にとっての癒しと安心感をもたらしてくれるものになったという。
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