目次
突然の妹
ユウタには、両親が再婚してからできた年の離れた妹・ミユがいる。彼が高校生の頃に生まれたミユは、まだ幼くて素直で、よく笑うかわいい女の子だ。しかし、忙しい日々と年齢の差もあって、ユウタはミユと過ごす時間が少なかった。
ある日、ふとしたきっかけで、ミユが奇妙なことを話し始めた。
「一緒に遊んでくれたのは、お兄ちゃん?」
ユウタが大学生になって、少し家で過ごす時間が増えた頃、ミユが急にこんなことを聞いてきた。
「ねえ、お兄ちゃん、前も一緒に遊んでくれたよね?」
唐突な質問にユウタは首をかしげた。確かに最近ミユとは一緒に遊んでいるが、「前も」というのが気になった。
「どういう意味?」とユウタが聞くと、ミユは少し首を傾げてこう答えた。
「赤ちゃんの頃、お兄ちゃんが毎晩遊びに来てくれたの。窓の外から声が聞こえて、私が笑うとお兄ちゃんも笑ってくれたんだよ」
まだ赤ちゃんだったはずのミユが、そんなことを覚えているはずがない。ユウタはその話を聞いて少し不思議に思ったが、子供の夢か空想だろうと笑い流した。
「夢の中の夜遊び」
ある夜、ユウタはふと気まぐれにミユの話を思い出し、夜中に彼女の部屋をそっと覗いてみることにした。窓のカーテンがゆらゆらと揺れ、冷たい風が入り込む部屋の中で、ミユは一人、スヤスヤと眠っている。部屋の奥には、彼女のお気に入りのぬいぐるみが並んでいた。
その時、どこからともなくかすかにユウタの名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。気のせいかと思って耳を澄ませていると、ミユが寝言で「また遊びに来てね」とつぶやいた。
まるで彼女が「誰か」と夢の中で遊んでいるような、不思議な感覚がユウタの胸に広がった。
ミユのもうひとつの「兄」
それからというもの、ミユは時折、夜中に起きては一人で部屋の窓の方を見て笑っていることがあった。ユウタはそのたびに不思議に思いながらも、ミユの様子が楽しそうなので特に何も言わずに見守っていた。
ある日、ミユがまた「夜のお兄ちゃんが遊びに来てくれた」と話したのをきっかけに、ユウタはついに真剣に尋ねた。
「ミユ、その夜のお兄ちゃんってどんな人?」
ミユは、うっすら微笑みながら答えた。
「髪が少し長くて、昔のお兄ちゃんみたいな服を着てるの。優しくて、私が眠るまで見ててくれるんだよ」
それを聞いてユウタはぞくりとした。ミユの言葉から、その「お兄ちゃん」がまるで別の時代の人間であるかのように感じられたのだ。
夜に見えた影
その後、ある夜のこと。ユウタがふとミユの部屋のドア越しに様子を伺っていると、窓辺に小さな影が浮かんでいるのが見えた。ミユの部屋は2階であり、誰かが入れるはずもない。しかし、窓の外には確かにもうひとつの影が浮かんでいる。
まさか、とユウタが思った瞬間、影は消え、部屋には静かな静寂が戻った。
ミユが目を覚まし、窓の方に向かって「おやすみ、お兄ちゃん」と静かに囁くのが聞こえた。それを聞いたユウタは、胸に暖かな感覚が広がりながらも、不思議な現象が頭から離れなかった。
見守られている存在
それ以来、ミユは「夜のお兄ちゃん」についてあまり話さなくなり、ただ優しい笑顔で眠りについていることが多くなった。ユウタは、ミユの記憶の中に、もうひとりの「お兄ちゃん」がいつまでもそばにいるのだと感じるようになった。
それが、遠い親戚や見守る存在なのか、あるいは過去にあった何かの記憶なのかは分からないが、ミユは夜が訪れるたび、いつも優しい誰かに見守られているように見えた。
それ以来、ユウタはミユにとっての「夜のお兄ちゃん」が誰であっても、彼女の人生に温かな存在として残っているのだろうと思うようになったのだった。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
新品価格 |
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |