私は中学生の頃、少し孤立していた。学校では些細なことでいじめの対象となり、誰とも話さず、ただ時間が過ぎるのを待つ日々だった。教室にいると、冷たい視線や小さな嘲笑が絶えず、心が擦り切れていくようだった。
ある日、帰り道で偶然見つけた古びた神社が、その日常を変えることになった。
目次
古びた神社との出会い
学校からの帰り道。普段は通らない裏道を歩いていた時、不意に目に入ったのがその神社だった。鬱蒼とした木々に囲まれた細い階段を上がると、小さな鳥居と古びた本殿が静かに佇んでいた。
人の気配が全くなく、鳥居の向こうには夕陽が差し込み、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。何かに引き寄せられるように鳥居をくぐり、本殿の前で立ち止まった。古い木彫りの賽銭箱に小銭を入れ、そっと手を合わせた。
「どうか、いじめがなくなりますように……」
つぶやいた言葉は、誰にも聞かれたくない弱音のようで、胸が締め付けられる思いだった。その後、何となく空を見上げると、どこか景色が変わったような気がした。
鳥居の向こう側
翌日、学校へ行くと、何かがおかしいことに気がついた。いつも私をいじめてくるクラスメイトたちが、まるで私の存在が見えていないかのように振る舞っている。話しかけてもこないし、すれ違っても目が合わない。それどころか、彼らの動きがどこかぎこちない。
(どうしたんだろう?)
不安と戸惑いを感じながらも、その日は少しだけほっとした。誰からもいじめられることなく、一日が過ぎたからだ。
しかし、日が経つにつれ、その不安は確信へと変わっていった。クラス全体が私を見ていないのではなく、何か異様な空気が漂っているのだ。廊下の端で笑っていた友達同士が突然黙り込み、誰もいない教室に黒板の音だけが響く。
そして気づいた。クラスメイトたちは少しずつ、「普通の人間ではないもの」へと変わりつつあるのだ。
もう一つの世界
ある日の放課後、再び神社を訪れることにした。鳥居をくぐり、もう一度祈れば何かが変わるかもしれないと思ったのだ。
神社へ着くと、いつもの静けさが辺りを包んでいた。本殿の前に立ち、小銭を入れて手を合わせた。
「元の生活に戻りたい……」
願いを込めて祈ったその瞬間、背後から強い風が吹き抜け、鳥居の向こう側が歪んで見えた。目を凝らすと、そこには見たことのない広大な草原が広がっていた。
(ここはどこ……?)
恐る恐る一歩踏み出すと、まるで現実世界ではない空間に足を踏み入れたようだった。風景は穏やかだが、不思議な心地よさと、言葉にできない不安が入り混じっている。遠くから、子どもの笑い声のような音が聞こえてきた。
もう一人の自分
その世界を歩いていると、突然自分そっくりの姿をした少女が現れた。彼女は私と全く同じ顔で、同じ服を着ている。しかし、目には強い意志が宿り、まるで別人のようだった。
「あなたは、何を願ったの?」
彼女が静かに問いかけてきた。
「いじめをなくしたかった……」
そう答えると、彼女は微笑み、「ここは、あなたが願った世界の一部」とだけ言った。その言葉の意味を問おうとしたが、次の瞬間、目の前の景色が一気に崩れ、意識を失った。
元の世界へ
気がつくと、私は学校の自分の席に座っていた。周りを見ると、いつものクラスメイトたちが普通に過ごしている。誰もぎこちなくなく、目もちゃんと合う。
「おはよう!」と、隣の席の子が明るく話しかけてきた。いつものいじめもなく、普通の日常が戻ってきた。
しかし、あの日見たもう一つの世界のことが頭から離れない。あれはただの夢だったのか、それとも……?鳥居の向こう側で出会った自分に似た存在が、何を意味していたのか、今もわからないままだ。
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