目次
人形との出会い
主人公のユカリは、休日にふと立ち寄ったアンティークショップで、その人形と出会った。
棚の奥にひっそりと置かれていたそれは、くすんだドレスを着たアンティークドールだった。長いまつげ、陶器の肌、柔らかそうな巻き毛。その顔はどこか愛らしく、どこか物憂げな表情を浮かべていた。
「この子、気になるんですけど……」
思わず店主に声をかけると、店主は笑顔で言った。
「その子はね、もう何十年もここにいるんですよ。誰にも選ばれなかったけれど、きっとあなたには合う気がしますね」
その言葉に背中を押され、ユカリはその人形を家に迎えることにした。
部屋に置かれた人形
家に帰り、そのアンティークドールをリビングの棚に飾った。ほこりを払い、ドレスのしわを整えてあげると、どこか嬉しそうに見えた。
「いい感じじゃない?」と呟きながら眺めていると、不思議な安堵感が湧いてきた。
その夜、ユカリは夢を見た。夢の中で、ドールが笑顔で話しかけてきたのだ。
「ありがとう、こんなに綺麗にしてくれて。ここ、居心地がいいね」
目を覚ましたユカリは、その夢を奇妙に思ったものの、どこか温かい気持ちが残った。
小さな変化
それからというもの、ユカリの生活には小さな変化が現れた。疲れて帰宅しても、人形の微笑みを見ていると、心が癒やされるようだった。
ある日、ユカリは落ち込んで帰宅した。仕事で失敗し、誰にも相談できず、涙がこぼれそうだった。
部屋に入ると、棚の上からアンティークドールが静かにこちらを見つめている。その目には、まるで「大丈夫」と言いたげな優しさがあった。
「……ありがとう」
ユカリは思わず呟いた。その瞬間、不思議と涙は止まり、心が少し軽くなった気がした。
夢の中の会話
ある夜、再び夢を見た。
「最近、元気になってきたね」
ドールが微笑みながら話しかけてきた。夢の中では自然と会話ができ、ユカリは仕事のことや日常の些細なことを話した。ドールはそれを静かに聞きながら、時折優しい言葉を返してくれた。
「あなたがここに連れてきてくれて、私も嬉しいの。だから、私が少しでも助けになればいいなって思うの」
目が覚めた後も、その夢の温かさが胸に残り続けた。
特別な存在
日々の中で、アンティークドールはユカリにとって特別な存在になっていった。静かに見守るその姿が、まるで小さな友人のようだった。
ある日、ユカリがドールの髪を整えていると、小さな紙片がドレスの裾から出てきた。そこには手書きの文字でこう書かれていた。
「笑っていてくれるなら、それだけで嬉しい」
ユカリはそのメッセージに胸が温かくなるのを感じた。誰が書いたものかは分からないが、それはまるで今の自分への言葉のように思えた。
これからも一緒に
ユカリはそれ以来、アンティークドールをもっと大切に扱うようになった。部屋を飾る観賞用のものではなく、本当に心を支えてくれる存在として。
今でも、時折夢の中でドールと会話をする。内容は日常の些細なことばかりだが、その夢があるだけでユカリの生活はずいぶんと明るくなった。
「これからも、よろしくね」
棚に飾られたドールに声をかけると、ドールはまるで笑顔を返してくれたように見えた。
そのアンティークドールは、これからもユカリのそばで静かに、しかし確かに見守り続けてくれるのだろう。
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