怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

深夜の猫たち 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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静まり返る高層オフィス

タカシは、プロジェクトの締め切りが迫る中、今日も深夜残業をしていた。オフィスは高層ビルの30階にあり、窓の外には街の明かりが広がっている。静まり返った空間でキーボードを叩く音だけが響く中、時計は午前1時を指していた。

「早く終わらせて帰ろう……」

そう呟きながら資料を確認していると、不意に猫の鳴き声が聞こえた。

「ニャー……」

タカシは動きを止めた。

「……猫? こんな高層ビルに?」

まさかと思いつつ、耳を澄ますと、再び小さな鳴き声が聞こえた。

「ニャー……」

声の出どころ

タカシは気味悪さを覚えながらも、声のする方を探すことにした。オフィスを歩き回るが、どこにも猫らしき姿はない。外から聞こえているのかと思い窓際に行ってみるが、窓は閉まっている。

「気のせいか……」

そう思い、席に戻ろうとした時――

「ニャー……ニャー……」

先ほどよりもはっきりと、しかも複数の声が聞こえてきた。

「……何匹いるんだ?」

タカシは再び声の出どころを探したが、やはり何も見つからない。ただ、声は確実に近づいているように感じた。

数え始める

落ち着かない気持ちを抑えるため、タカシはデスクに戻り、メモ帳を取り出した。

「……猫の声が聞こえる数を数えてみよう」

最初は1匹。その後、もう一つ声が増え、2匹、さらに3匹とメモ帳に書き込んでいく。

だんだんと声の数は増え続け、部屋全体に響き渡るようになった。

「ニャー……ニャー……ニャー……」

タカシの心臓は鼓動を速め、手は震え始めていた。

増え続ける声

メモ帳にはすでに15匹、20匹と記されている。

声はもはや部屋中から聞こえてくるようで、どこに目を向けても猫がそこにいるかのような錯覚を覚えた。しかし、どこにも姿はない。

「どうなってるんだ……!」

タカシは耳を塞いだが、声はさらに大きく、さらに数を増していく。

「ニャー……ニャー……ニャー……」

叫び出したい衝動をこらえ、メモ帳に「何匹目か」を書き続ける。30、40、50――もはや数えるのも恐ろしい数に達していた。

終わりなき声

声はついに大合唱となり、タカシの耳を完全に埋め尽くした。

「ニャー……ニャー……ニャー……!」

あまりの恐怖に耐えきれず、タカシはついにデスクに突っ伏した。その瞬間、意識が途切れるように真っ暗になった。

目覚めた後

気が付くと、タカシはデスクに突っ伏したまま目を覚ました。

「夢だったのか……?」

しかし、あの生々しい声の感覚は消えず、心臓は早鐘を打ったままだった。震える手でメモ帳を手に取る。

そこには、昨夜の恐怖が確かに刻まれていた。

「猫の声の数:1匹、2匹、3匹……50匹……」

メモ帳の最後に記された数字を見た瞬間、タカシは背筋に冷たいものが走った。

「……やっぱり、現実だったのか……?」

それ以来、タカシは深夜のオフィスを避けるようになった。あの猫の声が現実だったのか幻だったのか――その答えを知る勇気は、もうなかった。



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