目次
深夜の作業
リョウは、建設会社で働く現場監督だ。深夜の工事現場で、重機が動く音と作業員たちの声が響いていた。この場所には老朽化した建物があり、それを取り壊して新たなビルを建設する予定だった。
昼間は周囲の住民の生活を考慮し、工事は深夜に行うことが決まっていた。リョウは作業が滞りなく進むよう、現場を巡回していた。
しかし、作業が始まって数日後から、リョウは不気味な現象を感じ始めていた。
猫の鳴き声
その夜、リョウが現場を見回っていると、ふと猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー……」
周囲は完全に工事現場。周囲の建物もほとんど人が住んでおらず、猫が迷い込むような場所ではない。それでも確かに聞こえる鳴き声に、リョウは耳を澄ませた。
「ニャー……」
声はどこか遠くから聞こえてくるようだったが、次第に近づいてくるような気がした。
地中から出てきたもの
その夜の工事では、建物の基礎を掘り起こす作業が行われていた。大きな重機が地面を掘り進める中、作業員の一人がリョウに駆け寄ってきた。
「監督!ちょっと見てください!」
リョウが向かうと、掘り起こした地中から、古びたお地蔵様が出てきた。高さは50センチほどの小さなもので、苔が生えていて、かなり古いものに見える。
「なんだこれ……」
作業員たちは興味深げに眺めていたが、リョウは妙な違和感を覚えた。この場所に神社やお寺があるわけでもない。それなのに、こんなところにお地蔵様が埋まっているのはおかしい。
異様な気配
その後も工事は続いたが、猫の鳴き声はますます頻繁に聞こえるようになった。
「ニャー……ニャー……」
重機の音が鳴り響く中でも、その鳴き声だけははっきりと耳に届いた。
次第にリョウは、現場のどこからともなく漂ってくる視線を感じ始めた。振り向いても誰もいないが、確かに誰かに見られている感覚があった。
「気のせいだ……疲れてるだけだ……」
自分にそう言い聞かせながらも、リョウの心に不安が広がっていった。
お地蔵様の祟り?
その夜遅く、リョウが作業の進捗を確認していると、突然作業員の一人が叫び声を上げた。
「監督!あれ!」
指差した先を見ると、掘り起こしたお地蔵様のそばに、何匹もの猫が集まっている。
どこから現れたのか分からないが、黒い猫や三毛猫、白猫がまるでお地蔵様を取り囲むように座っている。そして全員が、一斉にリョウの方をじっと見つめていた。
「おい、なんなんだよこれ……!」
リョウが一歩下がると、猫たちは一斉に鳴き始めた。
「ニャー……ニャー……ニャー……」
その鳴き声は耳を刺すように大きく、頭の中に直接響いてくるようだった。
消えたお地蔵様
リョウが作業員を呼び寄せ、猫たちを追い払おうとしたが、次の瞬間――猫もお地蔵様も跡形もなく消えていた。
「……どこ行った?!」
その場にいた全員が呆然と立ち尽くしていた。確かにそこにあったはずのお地蔵様が、まるで最初から存在しなかったかのように、完全に姿を消していたのだ。
その後、工事は予定通り進められたが、現場での猫の鳴き声や不可解な出来事は誰も口にしなくなった。
後日談
それから数週間後、リョウはその現場の近くを通ることがあった。ふと気になり、工事中にお地蔵様が掘り出された場所を訪れると、そこには小さな祠が建てられていた。
地元の住民が、かつて祀られていたお地蔵様のために新しく建てたものらしい。しかし、掘り起こされたお地蔵様自体はどこにもないという。
リョウは静かに手を合わせ、祠の前で頭を下げた。その時、耳元でふと聞こえた。
「ニャー……」
振り返ったが、そこには何もいなかった。
それ以来、リョウはどんな工事現場でも、埋もれたものには不用意に触れないよう気をつけるようになった。猫の鳴き声が再び聞こえる気がしてならないからだ。
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