目次
公園での息抜き
マサキは深夜残業の合間に、近くの公園で一息つくのが日課になっていた。職場のビルは公園のすぐそばにあり、煮詰まった頭をリフレッシュさせるにはちょうど良い場所だった。
その夜も、マサキは公園のベンチに腰を下ろし、コンビニで買ったコーヒーを飲んでいた。時計はすでに午前1時を回っていたが、公園は静かで心地よかった。
聞こえる猫の鳴き声
しばらくぼんやりしていると、遠くから猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー……」
マサキは顔を上げたが、公園には猫の姿は見えない。
「どこだろう……?」
特に気にすることもなく再びコーヒーを飲んでいると、今度は鳴き声がさらに近づいてきた。
「ニャー……ニャー……」
その声は一匹だけではないように聞こえた。
公園の奥にある祠
鳴き声が気になり、マサキは声のする方へと歩き始めた。公園の奥には、小さな祠があるのを以前から知っていた。古びた木の祠で、そこには誰かが祀ったらしいお地蔵様が置かれていた。
祠の前まで来ると、鳴き声はぴたりと止んだ。
「なんだ、猫なんていないじゃないか……」
そう思った瞬間――祠の中から、かすかに鈴の音が響いた。
「チリン……」
マサキは驚き、祠の中を覗き込んだ。そこには、古びたお地蔵様が静かに座っていた。苔むした顔が、街灯に照らされて淡く輝いているように見えた。
近づいてくる気配
マサキが祠から顔を上げると、今度は背後から猫の鳴き声が聞こえてきた。
「ニャー……」
振り返ると、公園の木々の間に無数の目が光っているのが見えた。それは猫の目だ。
黒猫や白猫、三毛猫など、数え切れないほどの猫たちがじっとこちらを見つめていた。
「なんだよ、これ……」
足がすくみ、一歩も動けなくなったマサキの耳元で、再び鈴の音が鳴った。
「チリン……」
その音に続いて、猫たちは一斉に鳴き声を上げた。
「ニャー……ニャー……」
その声はだんだんと重なり合い、やがて耳をつんざくような大合唱となった。
お地蔵様の変化
恐怖に震えるマサキが祠を振り返ると、そこにあったはずのお地蔵様がわずかに動いているように見えた。
「そんな……ありえない……」
目を凝らすと、お地蔵様の顔がほんの少しだけ笑みを浮かべているように見えた。
猫たちの鳴き声はますます激しくなり、マサキはその場から逃げ出そうとしたが、足が動かない。まるで、何かに引き留められているかのようだった。
鳴き声の静寂
突然、猫の鳴き声が止んだ。辺りは一瞬で静寂に包まれた。
息を切らしながら周囲を見回すと、猫たちの姿も消えていた。祠には再びお地蔵様が静かに座っているだけだった。
「なんだったんだ、今のは……」
ようやく足を動かせるようになったマサキは、急いでその場を離れた。
後日談
翌日、マサキは会社で同僚に昨夜のことを話そうとしたが、言葉を飲み込んだ。誰も信じてくれないだろうし、自分でも何が起こったのか分からなかったからだ。
ただ、あの公園の奥にはもう二度と近づかないと決めた。
それから数日後、マサキの夢の中で、あの猫たちが再び現れることがあった。鈴の音とともに、どこか遠くから自分を見ているような視線を感じるのだ。
あの夜、祠の前で起きた出来事が現実だったのか、それとも幻だったのか――マサキは今でもそれを確かめる勇気を持てないままでいる。
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