小学5年生の僕は、両親が共働きで帰りが遅いため、一人で過ごすことが多かった。その日は、家に誰もいない寂しさがどうにも耐えられず、夜の公園へこっそり出かけることにした。
夜の公園は昼間とはまるで違う顔を見せる。街灯が薄ぼんやりと照らし、風で揺れる木の影が地面に奇妙な模様を作る。いつも遊んでいる場所なのに、どこか不気味だ。
目次
夜の公園に響く猫の声
遊具のある広場でブランコに座り、足を揺らしていると、どこからか猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー……」
最初はどこか遠くで鳴いているだけだと思ったが、次第にその声は近づいてきた。
「ニャー……ニャー……」
辺りを見回したが、猫の姿は見えない。ただ、声だけが闇の中から響いてくる。
「どこにいるんだ……?」
不安が胸に広がり、帰ろうと思って立ち上がったその時、公園の奥の茂みに目が止まった。そこに見慣れないものがあった。
謎のお地蔵様
茂みの奥に、小さな石のお地蔵様が立っていた。
「こんなところにお地蔵様なんてあったっけ……?」
昼間に何度も来ているはずの公園だが、あのお地蔵様を見た記憶はない。赤い前掛けが風に揺れ、何とも言えない存在感を放っている。
その時だった。
「ニャー……」
鳴き声が再び聞こえた。今度はお地蔵様のすぐ近くからだ。恐る恐る近づいてみるが、やはり猫の姿はどこにもない。
「どこから聞こえてるんだ……?」
お地蔵様をじっと見つめていると、その表情が不思議と悲しそうに見えてきた。まるで助けを求めているような――そんな気がしてならなかった。
増える鳴き声
再び足を動かそうとした瞬間、鳴き声が一斉に増え始めた。
「ニャー……ニャー……ニャオオ……」
声の数がどんどん増え、四方八方から響いてくる。背後、木の上、地面の下――どこからともなく猫たちの声が僕を包み込むように響く。
「やめろ……やめてくれ!」
叫んでも声は止まらず、耳をつんざくような大合唱が続く。
鈴の音と静寂
その時、お地蔵様の首元から微かな鈴の音が鳴った。
チリン……チリン……
その音が鳴り響いた瞬間、鳴き声がピタリと止んだ。
辺りは再び静寂に包まれ、耳鳴りがするほどの静けさが広がった。恐る恐るお地蔵様を見上げると、さっきまで悲しそうだった顔が、どこか優しい表情に変わっている気がした。
不思議な出来事の後
家に帰ると、両親がまだ帰っていなかった。リビングで一人震えながら、あのお地蔵様のことを考えた。あの鳴き声は一体何だったのか。
翌日、昼間に公園へ行ってみたが、あのお地蔵様はどこにもなかった。ただ、茂みのあたりに猫が数匹集まっているのが見えた。
僕をじっと見つめるその猫たちの目には、どこか人間味のある表情が浮かんでいた。僕は軽く頭を下げてその場を離れた。
後日談
それ以来、夜の公園には行かなくなった。あの夜の出来事が夢だったのか現実だったのかは分からない。ただ、あの鈴の音だけは、今でも耳に残っている。
時折、夜になると猫の声が微かに聞こえるような気がして、僕は布団を深く被るのだった。
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