目次
夜の教室
小学6年生のクラスでは、卒業を前にした特別な行事として、担任の山田先生が「夜の教室で語る会」を企画していた。普段は学校での宿泊は許されていないが、特別に許可を取り、一晩だけクラス全員で夜を過ごすことになった。
「今日はみんなで楽しく過ごそう。だけど、最後は先生が特別な話をするから、楽しみにしててね。」
山田先生はそう言って、昼間はレクリエーションやみんなでカレーを作るなどの活動を進めていた。
特別な話
夜、教室に全員が集まり、部屋の明かりを消してランタンだけが灯された。子供たちの顔がほのかな光に照らされ、不思議な雰囲気が漂う。
山田先生は椅子に座り、静かに語り始めた。
「みんなに、昔この学校であった話をしてあげよう。」
一瞬、ざわざわしていた教室が静まり返る。
語られる学校の秘密
「これはね、僕がまだ新米教師だった頃の話だ。この学校の屋上にね、一つ奇妙なことがあったんだ。」
先生の話によると、以前この学校では屋上が開放されていて、生徒たちが昼休みによく遊んでいたという。だが、ある日を境に屋上は封鎖されることになった。
「ある生徒が、昼休みに屋上で遊んでいるうちに行方不明になったんだ。名前はユミちゃん。明るくて元気な子だったよ。」
子供たちの中には、少し怖がって身を寄せ合う者もいた。
「その日、ユミちゃんは友達と屋上で遊んでいたんだけど、突然いなくなった。友達は『ユミちゃんが手すりの向こうを見てた』と言ってたけど、落ちた跡もないし、校庭にもどこにも姿はなかったんだ。」
不気味な足音
「それから不思議なことが起き始めたんだ。」
先生の声が少し低くなる。
「屋上は封鎖されたのに、夜になると、誰もいないはずの屋上から足音が聞こえるって。」
生徒たちは息を呑んで聞き入った。
「最初は風の音だと思った。でも、足音は廊下まで降りてきて、教室の前を通る音が聞こえるんだ。コツ……コツ……ってね。」
その瞬間、教室の窓が風でガタガタと揺れた。子供たちは驚き、声を上げた。
語る先生の異変
「先生、そのユミちゃんは見つかったんですか?」
一人の生徒が恐る恐る質問すると、山田先生はにっこりと微笑んだ。だが、その笑顔にはどこか不気味なものがあった。
「見つかってないよ。でもね、今も学校のどこかにいるかもしれない。」
先生の声が妙に低くなり、教室の空気が一層冷たく感じられる。
「例えば……今この教室にも。」
子供たちは怯えた目で周囲を見回した。誰かがふと窓の外を見ると、闇の中にぼんやりと人影のようなものが浮かんでいるのが見えた。
消える先生
「先生……なんか怖いです……」
別の生徒が泣きそうな声で言うと、山田先生は何も言わず立ち上がり、教室の隅に歩いていった。その瞬間、ランタンの光が消え、真っ暗になった。
「先生、どこですか……!」
子供たちが叫ぶ中、突然窓を叩く音が響いた。
コツン……コツン……
足音が教室の外を通り過ぎるような音が聞こえ、子供たちは震え上がった。
朝を迎えて
気づけば教室は朝の光に包まれていた。子供たちは全員眠り込んでしまっていたようだ。
「先生……?」
しかし、山田先生の姿はどこにもなかった。急いで他の先生に話すと、こう言われた。
「山田先生? そんな先生、うちにはいないよ。」
生徒たちは、誰があの夜話をしてくれたのか、永遠に知ることはなかった。
それ以来、夜の学校では時折、足音とともに何者かが教室を巡るという噂が語り継がれるようになった。
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