目次
放課後の教室
小学校4年生のケンタは、放課後も教室に残って勉強をしていた。学級委員をしている彼は、放課後に教室の掲示物を直したり、忘れ物を取りに来る友達の手伝いをしたりするのが日課になっていた。
その日も、クラスメイトが帰った後、一人で机に向かい漢字ドリルを解いていた。窓の外では夕日が差し込み、薄暗い教室に暖かな光を投げかけている。
ふと時計を見ると、すでに午後5時を過ぎていた。そろそろ帰らなければと思い立った時、教室の後ろから声がした。
「まだ帰らないの?」
見知らぬ先生
振り返ると、見たことのない男性の先生が教室の入り口に立っていた。年齢は40代くらいだろうか。濃い色のスーツに細いネクタイ、きちんとした身なりだが、顔にはどこか陰のある表情を浮かべていた。
「すみません、もう少しで帰ります!」
ケンタは慌てて答えたが、その先生の姿に違和感を覚えた。この学校の先生で見たことがない人だったからだ。
「放課後に教室に残るのはあまり良くないよ。学校にはね、いろんなものがいるから。」
先生は少し笑いながら、静かに教室に入ってきた。その言葉に、ケンタは軽い寒気を感じた。
奇妙な注意
「いろんなものって……何ですか?」
ケンタが恐る恐る聞くと、先生は窓際に歩み寄り、外を眺めながら言った。
「この学校にはね、放課後になると先生のフリをして子供を探すものがいるんだよ。」
「先生のフリ……?」
ケンタは意味が分からず首をかしげた。
「そう。誰にも気づかれずに教室に入ってくる。『まだ帰らないのかい?』ってね。」
その言葉を聞いた瞬間、ケンタの心臓がドキンと跳ねた。
「でも、先生……。あなたは誰ですか? どのクラスの先生ですか?」
先生の変化
ケンタが質問すると、先生はピタリと動きを止めた。ゆっくりと振り返ったその顔には、さっきまでの微笑みが消え、冷たい無表情が浮かんでいた。
「僕の名前はもう覚えられていないよ。でも、君は気をつけるんだ。放課後、知らない先生にはついて行かないことだ。」
その瞬間、廊下から誰かが教室に駆け込んできた。
「ケンタ、まだ帰ってなかったのか?」
担任の斉藤先生だった。
いなくなった先生
ケンタが斉藤先生に振り返り、「知らない先生が来てて……」と後ろを指さすと、そこには誰もいなかった。
「知らない先生? 誰もいないよ。君、遅くまで残ってるから怖い夢でも見たんじゃないか?」
斉藤先生は笑いながらケンタの荷物を片付けさせたが、ケンタの心はざわついていた。確かにそこに先生はいたし、奇妙な注意をしてきた。
後日談
次の日、ケンタは学校の歴史を調べてみた。すると、今の校舎が建てられる前に、放課後に見回りをしていた先生が事故で亡くなったという話を見つけた。その先生の顔写真は、あの知らない先生とそっくりだった。
「放課後、知らない先生に気をつけろ……あれは……」
それ以来、ケンタは放課後の教室に残ることをやめた。そして、学校では「放課後、知らない先生に注意」というルールが静かに語り継がれるようになった。
もし、放課後に知らない先生に話しかけられたら――君も気をつけるべきだ。
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