怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

図書室の不思議な本 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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小学5年生の僕は、本を読むのが好きだった。特に放課後の図書室は、クラスメイトがいない静かな空間で、自分だけの冒険や発見に没頭できる大切な場所だった。

その日もいつものように図書室を訪れ、棚の間を歩きながら新しい本を探していた。お気に入りの冒険小説を借りようと思っていたけど、ふと、奥の方にある古びた棚に目が止まった。

見慣れない本

その棚は、図書室の隅にあり、あまり使われていないようだった。埃をかぶった背表紙の並びを眺めていると、一冊だけ異質な雰囲気を持つ本が目に入った。

表紙にはタイトルも作者名もなく、暗い緑色のカバーに金色の線で模様が描かれているだけだった。不思議な引力に引き寄せられるように、その本を手に取った。

開いてみると、中には何も書かれていない白いページが続いている。

「なんだこれ、落書き用のノート?」

少しがっかりしながらページをめくり続けると、真っ白な中に突然、一行だけ文字が現れた。

「この物語は、あなたが主人公です」

始まる物語

思わずドキッとした。何かのいたずらかと思いながら、さらにページをめくると、次のページには僕の名前が書かれていた。

「○○は、その日、いつもと同じ図書室でこの本を見つけました。」

まるで今の僕の状況そのものだ。心臓がドキドキし始め、ページを進める手が止まらなくなった。

次のページには、さらに奇妙なことが書かれていた。

「本を閉じると、○○は不思議な出来事に巻き込まれる。」

不思議な出来事

その文を読んだ瞬間、図書室の隅でカタンと音がした。振り返ると、誰もいないはずの部屋の中で、ひとつの椅子が倒れていた。

「……なんだ?」

周りを見回しても誰もいない。怖くなって本を閉じ、急いで棚に戻そうとしたが、本が手から離れない。まるで指が本にくっついているようだった。

仕方なく、借りることにして本を持って図書室を出た。

家での続き

家に帰ると、早速その本を開いて続きを読んだ。

「○○が家に帰ると、本の中の世界が現実に広がり始める。」

意味が分からなかったが、次の瞬間、部屋の中の空気が変わった。静まり返った空間の中、何かが動く気配がする。

カーテンの隙間から風が吹き込み、机の上の紙がふわりと舞い上がった。

そして、ページをめくると、また新しい一文が浮かび上がる。

「本を最後まで読み切ると、物語の結末が現実になる。」

読み進めるか、やめるか

怖くなり、本を閉じようとしたが、不思議と目が離せない。ページをめくるたびに、僕の行動や気持ちがそのまま文章になっていく。

次のページにはこう書かれていた。

「○○は、本を閉じるか読み進めるか、選ばなければならない。」

僕は迷った。本を閉じればこの奇妙な出来事から解放されるかもしれない。でも、最後まで読めば、この物語の結末を知ることができる。

どちらが正しいのか分からないまま、僕はゆっくりとページを閉じた――。

次の日、図書室の図書室の古びた棚に本を戻した。

しばらくして

しばらくしてそんな本のことは忘れていたが、ふと思い出しまだその本があるのが気になった。

学校に行くと、図書室の古びた棚にその本はもうなかった。司書の先生に聞いても、「そんな本は知らない」と言うだけだった。

あの本がどこへ行ったのか、誰が置いたのかは分からない。ただ、僕の中で、あの物語はまだ続いているような気がする。

その時読まなかった最後の一文――それが何だったのか、今でも知りたい気持ちと、知りたくない気持ちが混ざり合っている。



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