目次
静かな図書室
小学5年生のリクは、本を読むのが好きだった。友達と遊ぶのも楽しいけれど、放課後の図書室で静かに過ごす時間が何よりの楽しみだった。
ある日の放課後、リクは図書室の隅にある古い本棚を眺めていた。学校の図書室はそこそこ広く、新しい本が多いが、その棚だけは古い本がぎっしりと並んでいる。少し埃っぽく、誰も近寄らない場所だ。
リクはその棚の中で、妙に目を引く一冊を見つけた。
見つけた本
その本は、真っ黒な表紙に銀色の文字でタイトルが書かれていた。
「キセキのセカイ」
装丁は少し傷んでいるが、どこか引き寄せられるような雰囲気があった。
「こんな本あったかな……?」
不思議に思いながら本を開くと、最初のページにはこう書かれていた。
「この本を開いた者よ、あなたの望む世界を見せましょう」
その言葉にリクの胸は高鳴った。
本の中の世界
ページをめくると、突然リクの目の前に光が広がった。気がつくと、リクは見たこともない美しい場所に立っていた。
青々とした草原が広がり、空には大きな虹がかかっている。近くには透き通った川が流れ、川辺では動物たちが楽しそうに遊んでいた。
「ここ……どこ?」
リクは夢を見ているのかと思ったが、草の香りや川の音があまりにもリアルだった。
その時、近くの木の下で小さな鳥が話しかけてきた。
「ようこそ、『キセキのセカイ』へ。この世界は君が見たいものを映し出す場所だよ。」
自分だけの冒険
リクは夢中でその世界を歩き回った。好きな動物たちが話しかけてきて、一緒に遊んでくれた。山の上には大きな木があり、その木の下で休むと、優しい風が吹き抜けた。
「すごいや……これ、本当に僕の世界なの?」
鳥が再び答えた。
「そうだよ。この本を開いた人だけがこの世界に来られるんだ。」
その言葉を聞いたリクは、この場所がとても特別なものだと感じた。
現実に戻る
しばらくすると、どこからか鐘の音が聞こえてきた。
「そろそろ帰る時間だよ。」
鳥が優しく言った。リクはまだ帰りたくなかったが、本を閉じると元の場所に戻れると教えてくれた。
リクは「また来るよ」と言いながら本を閉じた。
不思議な余韻
気がつくと、リクは図書室の自分の席に戻っていた。本は閉じられたまま机の上にあった。
その後も、リクは図書室に行くたびにその本を開き、冒険を楽しんだ。しかし、不思議なのは、他の誰にその本のことを聞いても「そんな本は知らない」と言われることだった。
さらに、ある日リクが本を探そうとすると、「キセキのセカイ」は本棚から消えていた。
特別な思い出
それ以来、その本は見つからなかったが、リクの記憶には鮮やかにあの世界が残っている。
「またあの世界に行けたらいいな……」
そう思いながら、本の表紙の感触を指先に思い出すことがある。
その本が再びリクの手に戻るのは、いつの日になるのか――それは、誰にも分からない。
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