怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

高台から見た不思議な空 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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社会に出たばかりの新入社員だった頃、今でも忘れられない奇妙な体験をしたことがあります。怖い話というほどでもないのですが、時々思い出しては、不思議な気持ちになるのです。

定時退社と気分転換

その日は珍しく定時で退社し、最寄り駅に着いた時のことです。会社勤めを始めてから1か月が過ぎた頃で、社会人としてのプレッシャーや疲労感が少しずつ積もってきていました。

家に帰る前に、気分転換に近くの公園へ寄ることにしました。その公園は高台があり、そこから見える景色がとても綺麗だというのが、地元ではちょっとした話題になっていたのです。

高台に到着すると、すでに日が暮れかけており、薄暗い空が広がっていました。涼しい風が吹き、仕事で張り詰めていた気持ちが少しずつほぐれていくのを感じました。

見たことのない空

ふと空を見上げた瞬間、異変に気付きました。

そこには、今まで見たこともない奇妙な空が広がっていたのです。

遠くの空が虹色のように輝いていました。ただ、それは普通の虹色ではありませんでした。絵の具で何色も混ぜたように、どこか濁っているけれど、不思議と目を引く光景でした。

「なんだ、これ……」

私は呆然とその空を見上げていました。まるで異世界の空を見ているような感覚で、現実感が薄れていくようでした。

写真に収める

我に返り、慌ててポケットから折り畳み式の携帯電話を取り出しました。当時はまだスマートフォンが普及しておらず、画質も今ほど良くありません。それでもこの空を残したい一心で、何枚もシャッターを切りました。

その空は、5分ほどでしょうか。見ている間に、徐々に光が弱くなり、最終的には消えてしまいました。空はいつもの薄暗い夕焼け色に戻り、先ほどの現象がまるで幻だったように思えました。

誰も信じてくれない

帰宅後、家族にその写真を見せると、「何これ、不思議な色ね」と興味を示しはするものの、どこか軽く流されている感じでした。

後日、友人にも写真を見せましたが、「古い携帯だと画質が荒いから、単なる夕焼けの光加減じゃない?」と言われる始末でした。

しかし、私にははっきりと覚えています。その空の色、異様な輝き、そして現実感のない美しさ――写真では到底伝えきれない、何か特別な空だったのです。

今も残る記憶

あれから何年も経ちますが、その時撮った写真は今でもデータとして残っています。見返すたびに、あの瞬間の奇妙な感覚が蘇ってきます。

スマホのカメラが普及した今だったら、もっと鮮明に撮影できていたのに、と少し悔しく思います。でも、あの時の不思議な空が特別に感じられるのは、むしろ曖昧な写真のおかげかもしれません。

あの空は一体何だったのでしょう。自然現象なのか、それとも――。

答えは今も分かりません。ただ、一つ言えるのは、あの日見た空が、私の中で「奇跡」として深く刻まれていることです。



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