目次
見つけた家具
リカは一人暮らしを始めたばかりのOLだった。休日に家具を探しに行った先で、彼女は一目惚れするようなアンティークの椅子を見つけた。
猫脚のデザインに、美しい木目の背もたれ。座面には深い緋色の布地が張られており、どこか優雅で独特の雰囲気を漂わせている。
店員に「この椅子は一点物ですよ」と言われ、即決で購入した。新居の雰囲気にぴったりだと思ったのだ。
部屋に置いた夜
椅子が届いた日は、リカは新しい家具に満足して部屋でゆっくり過ごしていた。椅子は窓際に置き、カーテン越しの柔らかな光に照らされている。
「素敵だなぁ……」
何度も見返しては満足感に浸り、その日は特に疲れていたこともあって早めにベッドに入った。
しかし、夜中――ふと目を覚ます。
聞こえる音
時刻は深夜2時過ぎ。静まり返った部屋の中で、小さな音が聞こえてきた。
「ギシ……ギシ……」
最初は気のせいかと思ったが、耳を澄ますと確かに聞こえる。床材がきしむような音だ。
「……何?」
リカは恐る恐る体を起こし、音のする方を見た。音は、窓際のアンティークの椅子から聞こえているようだった。
誰もいない椅子
リカは意を決して、椅子に近づいた。しかし、そこには誰もいない。ただ静かに、月明かりの中で椅子がたたずんでいるだけだ。
「気のせいかな……」
自分を納得させるように呟き、再びベッドに戻った。しかし、布団を被った直後、再び音が響く。
「ギシ……ギシ……」
今度は、まるで誰かが椅子に腰をかけているような、微妙なリズムがあった。
朝を迎えて
一晩中、不安なまま過ごしたリカは、翌朝になってようやく椅子をじっくり観察した。しかし、特に異常は見当たらない。ただ、部屋に置かれている椅子だ。
「疲れてただけかな……」
そう思うことにして、その日は仕事に向かった。
椅子の変化
その夜もリカは早めにベッドに入った。しかし、またしても椅子のきしむ音で目が覚めた。
「ギシ……ギシ……」
音は徐々に近づいているように聞こえた。リカが震える手で布団を少しだけめくり、椅子の方をそっと覗いた瞬間――椅子が微かに揺れているのを見た。
誰も座っていないはずの椅子が、まるで誰かが腰を下ろしているかのように、わずかに揺れている。
消えない気配
翌朝、リカは椅子を捨てようと思った。しかし、不思議なことに、どれだけ見てもその椅子にはどこか引きつけられるような魅力がある。
「捨てるのは、なんだかもったいないな……」
結局、その日は捨てられずじまいだった。そして、その夜も椅子の音に目を覚ますことになった。
最後の夜
数日後、リカは椅子を処分する決心をした。処分業者に連絡し、椅子を回収してもらう手筈を整えた。しかし、その夜――
深夜2時、リカは目を覚ました。
「ギシ……ギシ……」
椅子の音が聞こえた後、今度は部屋の中で微かな足音が響いた。
「トン……トン……」
足音がゆっくりとリカのベッドに近づいてくる。そして――
足元に重みを感じた瞬間、リカは布団を引き剥がされるような感覚に襲われた。
椅子が消えた後
翌朝、リカは目を覚ますと、椅子が消えていた。誰かが持ち去ったのか、それとも――
その後、リカの部屋には静けさが戻ったが、時折夢の中で、椅子に座った誰かがこちらをじっと見ている光景を見るようになった。
「ギシ……ギシ……」
あの音は、夢の中でも耳から離れない――。
アンティーク家具に宿るものが何なのか、それを知るのはいつの日か。
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