祖母が亡くなり、実家の片付けを手伝っていた時のこと。古びた家具がたくさん詰まった納屋で、僕は一つのアンティークチェストに目を留めた。それは木目が美しく、引き出しの取っ手が金色に輝く上品な家具だった。
母は「ああ、それはおばあちゃんが大事にしてたものよ」と言ったが、詳しいことは知らないらしい。ただ、祖母が若い頃に手に入れたもので、かなり気に入っていたという話だった。
目次
持ち帰ったチェスト
そのチェストを気に入った僕は、部屋のインテリアとして持ち帰ることにした。家に運び入れてからは、引き出しに文房具や書類を入れるなど、ちょっとした収納として使っていた。
しかし、そのチェストを使い始めてから、不思議なことが起こるようになった。
小さな発見
ある日、引き出しを開けると、見覚えのない古い写真が一枚入っていた。それは若い頃の祖母が笑顔で写っている写真だった。
「こんな写真、どこから……?」
驚いたが、納屋で片付けをしていた時に紛れ込んだのかもしれないと思い、その写真を机の上に飾った。
次の日、別の引き出しを開けると、小さな紙片が入っていた。そこには古い万年筆で書かれた祖母の筆跡があった。
「今日もいい日でありますように。」
そのメッセージを見て、不思議と心が温かくなった。
小さな癒やし
それからというもの、引き出しを開けるたびに、どこからともなく祖母にまつわる品やメッセージが現れるようになった。
たとえば、引き出しの中に入っていた古いハンカチは、祖母がいつも持ち歩いていたもので、ふわりと懐かしい香りがした。あるいは、古びたノートには祖母が若い頃につけていた簡単な日記が書かれていて、そこにはこんな一文が残されていた。
「小さなことでも感謝を忘れない。それが幸せの秘訣。」
引き出しを開けるたびに、祖母が語りかけてくるようで、忙しい毎日の中でも心が癒される時間が増えていった。
最後の贈り物
そんなある日、最下段の引き出しを開けると、小さな木箱が入っていた。箱を開けると、そこには祖母がいつもつけていたペンダントが入っていた。
「ありがとう」と呟くと、なぜか胸がじんと熱くなった。
それ以来、チェストから新しいものが現れることはなくなったが、そのチェストを見るたびに、祖母との思い出が蘇る。
チェストがくれたもの
そのアンティークチェストは、今も僕の部屋に置いてある。ただの家具であるはずなのに、祖母の温かさや言葉が詰まった特別な存在になった。
祖母が大切にしていたこの家具は、きっと僕に幸せのヒントを伝えるために、そばに来てくれたのだと思う。
アンティーク家具はただ古いだけではなく、そこに宿る記憶や想いが、新しい持ち主に不思議な力を与えてくれるものなのかもしれない――。
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