目次
アンティーク家具との出会い
ユカは、古いものが好きなOLだった。休日にふらりと立ち寄る骨董品店で見つける、年季の入った食器や飾り物は、彼女の小さな楽しみだった。
ある日、いつもと違う骨董品店で、ユカは小ぶりなアンティークのチェストを見つけた。
引き出しが3つ付いた、木製の家具で、どこか温かみのあるデザインだ。
「いいなぁ、部屋に置いたら可愛いかも。」
そのチェストは、引き出しの角に小さな傷がついていて、少し使い込まれた感じがあったが、それが逆にユカの心を惹きつけた。値段も手頃だったので、即決で購入することにした。
家に届いたチェスト
チェストが家に届いた日は、ユカは部屋の模様替えをして、その家具を部屋の角に置いた。ランプを乗せて、引き出しには雑貨をしまう。
「これだけで、部屋がちょっとおしゃれになった気がする。」
家具をじっくり見ていると、ユカは引き出しの中から何か紙が挟まっているのに気づいた。
「ん? 何だろう……?」
取り出してみると、それは小さな手紙だった。
手紙の内容
手紙は古びた便箋に書かれていた。文字は丸くて優しい筆跡で、こう書かれていた。
「このチェストを使ってくれる人へ。ありがとう。この家具は長い間、私のそばにありました。あなたのそばでも役に立てると嬉しいです。どうか、大切にしてあげてください。」
読んだ瞬間、ユカは心がほっこりと温かくなった。
「誰が書いたのかな……?」
送り主の名前も、書いた日付も何も書かれていないが、この家具が誰かにとって大切な存在だったことが伝わってきた。
不思議な出来事
それからというもの、ユカはそのチェストを大事に使うようになった。朝、出勤前にチェストの上でおしゃれ小物を整えたり、引き出しにお気に入りの文房具をしまったりして、毎日触れるのが楽しくなった。
ある日のこと、ユカは仕事で大きな失敗をして、帰宅後に落ち込んでいた。部屋に入ると、なぜかチェストがほんの少しだけ、まるで迎えるように前に出ている気がした。
「……気のせいかな。」
そう思いながらチェストの引き出しを開けると、中からふと懐かしい香りが漂った。それはユカの祖母が生前使っていたお香の匂いに似ていた。
その香りに包まれると、不思議と心が落ち着いた。まるで、誰かが「大丈夫だよ」とそっと背中を押してくれるような感覚だった。
さらに見つかる手紙
ある日、ユカがチェストの掃除をしていると、もう一通の手紙を見つけた。今度は小さなメモ用紙に短くこう書かれていた。
「疲れたら、ここで休んでね。」
その一文に、ユカは涙がにじむのを感じた。このチェストは、ただの家具ではない。誰かが大切にしていた想いが詰まっている――そんな気がした。
温かい存在
それ以来、ユカにとってそのチェストは、単なる家具以上の存在になった。部屋の中でいつも優しく見守ってくれているような、心の拠り所のようなものだ。
引き出しを開けるたびに感じる温かさと、そっと背中を押してくれるような不思議な力に、ユカは何度も助けられている。
新たな手紙を添えて
数年後、ユカが引っ越す際、そのチェストを次の住まいに持っていく準備をしていると、ふとある考えが浮かんだ。
「このチェストが、私の手を離れて次の人のもとに行くことになったら……」
ユカは小さなメモを一枚書き、引き出しの隅にそっと忍ばせた。
「このチェストを使ってくれる人へ。ありがとう。きっとこの家具は、あなたに温かい時間を届けてくれます。どうか、大切にしてあげてください。」
それは、ユカがこの家具からもらった優しさを次の誰かに届けるためのメッセージだった。
アンティーク家具には、時を越えた誰かの想いが宿ることがある。
それは新しい持ち主に、小さな奇跡と温もりをそっと手渡していくのかもしれない。
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