目次
プロローグ
街外れにひっそりと佇む、古びたレンタルビデオ店。時代遅れのこの店は、古い作品やマニアックな映画が好きな常連客に支えられ、辛うじて営業を続けていた。だが、そのカウンターに置かれた一台の古いキーボードには、誰も知らない「秘密」があった――。
本文
主人公の直樹(仮名)は大学生で、少し変わったアルバイトをしていた。それが、この個人経営のレンタルビデオ店での仕事だった。店主は無口な老人で、顧客は少なく、店内はいつも薄暗い。
カウンターには年代物のPCが置かれ、そこに接続された黄ばんだ古いキーボードは、どこか異様な存在感を放っていた。キーの文字は擦り切れ、一部のキーには黒ずんだ跡がついている。
初めてシステムを使おうとした直樹は、キーを押した瞬間に妙な違和感を覚えた。キーを押すたびに指先に冷たさが伝わる。それは機械の冷たさというより、まるで「生きている何か」に触れているような感触だった。
消えた記録
直樹が働き始めて1週間ほど経ったある日、客の借りたDVDのデータが勝手に消えるというトラブルが起きた。カウンターのPCで記録を確認しても、誰が何を借りたのか、一部のデータが見つからない。
不思議に思いながらキーボードを操作していると、突然画面に不気味なログが表示された。それは明らかにレンタル管理システムには存在しない、謎のメッセージだった。
「貸出:1999年12月31日 返却:未定」
不審に思った直樹は店主に尋ねたが、「あのキーボードは触りすぎない方がいい」とだけ言われた。
店の過去
直樹は気になり、店に長く通っている常連の一人に話を聞いてみた。その常連は、店の過去について驚くべき話を語り始めた。
「昔、この店で働いてた若いバイトが、突然失踪したことがあったらしいよ。その日、店は客で混んでたんだけど、そのバイトが急に“キーボードが動いてる”とか言い出して、いきなり姿を消したって。」
常連の話では、それ以降もこの店のキーボードを使うと「返却されていない記録」が勝手に復活することがあるという。その記録は、必ず何か不吉な事件や事故に関連するタイトルばかりだったらしい。
真実の囁き
その夜、直樹が閉店作業をしていると、キーボードが突然音を立てた。誰も触っていないのに、キーが勝手に押されている。画面にはまたしても謎のメッセージが表示された。
「返却期限を守らないで」
その直後、棚に並んでいたDVDが一斉に落下した。驚きながら拾い上げると、すべてのパッケージに一つだけ共通する特徴があった。それは、1999年の年末にレンタルされた記録があるDVDばかりだったのだ。
直樹は怖くなり、店主に辞めたいと申し出た。しかし店主は、ただこう呟いただけだった。
「君も“返却”される前に辞めるのがいい。」
結末
直樹はその日を最後に店を去り、二度と戻らなかった。しかしその後、店に行った常連の話によると、キーボードは相変わらず店に置かれているという。時折、誰もいないカウンターからタイピング音が聞こえ、画面にはこう表示されるそうだ。
「貸出:未記録 返却:未定」
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