目次
プロローグ
これは、まだ個人経営のレンタルビデオ店が多く存在していた少し昔の話。佳樹(よしき)は大学生で、地元にある古びたレンタルビデオ店「ビデオオアシス」でアルバイトをしていた。そこではたまに、不思議なことが起きると噂されていた――。
本文
佳樹が働いていた「ビデオオアシス」は地元の常連客に愛される店だった。店主の田中さんは親切な中年男性で、古い映画やマニアックな作品を大切にしている人だった。
ある日、佳樹がレジで返却されたビデオを整理していると、一つ奇妙なことに気がついた。返却リストの中に見覚えのないタイトルがあったのだ。
そのタイトルは、「次のあなたへ」。
ビデオのケースは黒く、タイトル以外には何も書かれていなかった。不思議に思った佳樹は店の在庫リストを確認したが、そんなタイトルの作品は登録されていなかった。
「返却されたものを、どうやって確認しないといけないんだ?」
疑問に思いつつも、棚を確認すると――なんと、その不思議なタイトルのビデオが、他のビデオと同じようにきちんと並んでいた。
内容の謎
佳樹はさらに興味を持ち、田中さんにそのビデオについて聞いてみた。しかし田中さんも、「そんな作品は仕入れていないし、棚にあるのも見たことがない」と首を傾げた。
「でも、返却されたってことは誰かが借りてたんだろう?ログを見れば借りた人が分かるかもな。」
田中さんと佳樹が過去の貸出履歴を調べると、そのビデオは数日前に「鈴木」という名前の客が借りていたことが判明した。しかし、登録されている鈴木という常連客は既に何年も店に来ていなかった。
「あの人、確かずっと前に引っ越したはずだよな……。」
2人は困惑したが、田中さんは「まあ、気にしなくていいさ」とその話を終わらせようとした。しかし、佳樹はどうしてもその内容が気になり、閉店後にそのビデオを再生することにした。
ビデオの中身
ビデオデッキにビデオをセットして再生ボタンを押すと、画面には古びた室内の映像が映し出された。その部屋はどこか見覚えがある――そう、それは「ビデオオアシス」の店内だった。
しかし、映像の中の店は異様に暗く、まるで誰かが深夜に隠しカメラで撮影したような雰囲気だった。さらに映像の中には、一人の男性が映っていた。その男はカウンターで返却されたビデオを整理しているように見える。
驚くべきことに、その男性は佳樹だった。
映像の中の佳樹は、今まさに「次のあなたへ」と書かれたビデオを棚に戻そうとしていた。そしてその瞬間、映像が突然途切れた。
佳樹は恐怖を感じ、すぐに田中さんにそのことを話したが、田中さんは「もうそれ以上は見ないほうがいい」と強く忠告した。しかし、その忠告を無視してもう一度再生してみると――ビデオの内容が完全に消えていた。
結末
その後も「次のあなたへ」というビデオは時折返却されるようになり、そのたびに棚に戻っているのを佳樹は目撃した。しかし、誰が借りているのかは一向に分からなかった。
数年後、佳樹は大学を卒業して店を辞めたが、地元に戻った際に店を訪ねると、店は既に閉店していた。そしてその跡地には、廃墟のような静けさが漂っていた。
その後、佳樹は偶然ネットで「次のあなたへ」というビデオに関する話題を見つけた。それは全国のレンタルビデオ店で語られる奇妙な噂だった――「次のあなたへ」というビデオは、どこにでも現れるが、借りた人や見た人は皆「自分の映像」を見ることになるのだと。
佳樹は背筋が凍るのを感じた。
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