田中雄介は、倉庫で書類を整理している最中、一通の古びた封筒を発見した。その封筒には「調査報告書 - 森の川に住む生物」と記されていた。どうやら、川に住む未確認生物に関する調査中に起きた出来事を記録したもののようだ。
中から報告書を取り出すと、その用紙は黄ばんでおり、時代を感じさせるものであった。雄介は慎重にその内容を読み始めた。
目次
調査員失踪に関する報告書
調査対象:〇〇森林 川に住む未確認生物
報告者:M.K.(調査チーム補助員)
調査日時:昭和56年5月10日~5月15日
背景
昭和56年5月初旬、〇〇森林内にある川で、未確認生物の目撃情報が複数寄せられた。生物は川を住処としており、時折川を離れて周辺の森林に現れ、小型の哺乳類を捕食するという。この情報をもとに、調査員T.N.が現地に派遣されたが、数日後に連絡が途絶えた。
5月10日、私M.K.は、調査員T.N.を捜索するため、調査チームの一員として現地へ向かった。
調査員の痕跡
現場に到着後、川沿いを捜索したところ、調査員が使用していたとみられるテントを発見。テント内には、調査用の器具やノートが散乱しており、慌てた様子で逃げ出したような痕跡が見られた。
さらにテントの近くで、調査員のものと思われるノートが見つかった。ノートには、以下の記録が残されていた。
調査員のノート(抜粋)
「生物の泣き声が聞こえる。深い低音で、まるで地響きのようだ。川辺で確認したが、何も見えない。しかし、足跡のような痕跡があった。」
「夜になると、川から大きな水音が聞こえる。何かが水面を叩くような音だ。慎重に近づくべきだろう。」
「ここから先、森の中に入ることを考えている。生物がそこにいる気配がする。」
ノートはそこで終わっていた。
テント付近での発見
テントから少し離れた場所で、調査員T.N.の遺体が発見された。遺体は、異様な状態で損傷を受けており、何らかの大型生物に食い荒らされた痕跡があった。具体的な損傷の詳細は記載を控えるが、その状況はあまりに凄惨であり、私たち調査チーム全員に大きな衝撃を与えた。
調査は危険と判断し、直ちに撤退を決定した。
生物との遭遇
撤退中、川沿いで未確認生物と遭遇した。
その生物は水辺に佇み、私たちに気づくと一瞬だけ姿を見せた。外見は大型の両生類に似ているが、何か異様な気配をまとっており、人間の知覚を超えた存在感を放っていた。
生物の体は濡れており、全体的に滑らかな肌を持つように見えた。目は黒く光を反射せず、全身が水の中から出てきたばかりのように見えた。
私はとっさにカメラを取り出し、シャッターを切った。しかし、その瞬間、生物は川に飛び込んで姿を消した。音もなく、ただ水面に大きな波紋を残していた。
写真について
後日、撮影した写真を確認したが、残念ながら画質が非常に悪く、生物の姿を明確に捉えることはできなかった。写真には、かろうじて川辺に立つ巨大な影のようなものが映っていたが、詳細を判別するには至らなかった。
結論
この調査で得られた情報は限られているが、生物の存在を否定することはできない。調査員T.N.の失踪とその結末、さらに私たちが目撃した生物の姿から判断するに、〇〇森林の川付近は非常に危険であり、慎重な対応が求められる。
読み終えて
田中雄介は、報告書を閉じ、手元に残された写真を確認した。写真には、川辺に立つ巨大な影がぼんやりと映っていたが、画質が粗いため、生物の形状をはっきりと見ることはできなかった。
「もっと鮮明に見えればよかったのに…」
雄介はそう呟きながら、背筋に冷たいものが走るのを感じた。未知の生物と調査員の悲劇的な結末を想像すると、心に不安が広がった。だが、彼は次の書類整理に気持ちを切り替えることにした。
次に手に取った封筒には「高機能椅子の商品カタログ」と記されていた。そこには、調整可能な背もたれや座面のクッション性について詳細に説明された内容が書かれていた。
田中雄介は、その内容に少しだけ安堵し、微笑みながら封筒を棚に戻した。
「こういう普通の書類が一番だな…」
そう呟きながら、彼は静かに次の作業に取り掛かる準備を始めた。
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