目次
【プロローグ】
会社員の和也は、毎日繰り返される満員電車と退屈なオフィスワークにうんざりしていた。上司からの理不尽な要求に耐える日々の中、彼の頭には「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という夢だけが浮かんでいた。
「いつかこんな仕事から解放されて、自由に生きてやる」
そう思い、副業や投資を試してみたものの、ことごとく失敗に終わる。株式投資では一時的に利益を得たが、その後の暴落で大損。副業も時間ばかり取られ、月に数千円の稼ぎが精一杯だった。
心がすり減っていく中、和也はある奇妙な出来事に遭遇する。
【奇妙な出会い】
ある雨の日、和也は仕事帰りにいつもとは違う道を歩いていた。嫌なことばかりの一日で、ただ気分を変えたかったのだ。
細い路地に入り込んだ先で、古びたレンガ造りの建物を見つけた。その建物には人が住んでいる気配はなく、まるで時間に取り残されたような雰囲気を放っていた。
ふと見ると、建物の入り口には木製のドアがあり、その上には手書きの看板がぶら下がっている。
「FIREを目指す者だけが入れる」
和也は驚きながらも、自然と引き寄せられるようにドアを開けた。
【謎の部屋】
ドアの向こうには、古い応接室のような空間が広がっていた。だが、不思議なことに家具や装飾はどれも新品同様で、どこか温かみがあった。
中央にはスーツ姿の中年男性が座っており、にこやかに微笑んでいた。
「ようこそ。あなたも、仕事に疲れたクチですか?」
「ええ…正直、もう嫌で嫌で。FIREを目指してますが、全然うまくいかなくて。」
男性は優しく頷き、机の上に置かれた分厚い本を和也に見せた。
「この本には、FIREを成功させた全ての答えが書かれています。ただ…それを知るには、あなたの『時間』を少しだけいただく必要があります。」
【奇妙な契約】
男性の説明によると、本に書かれた情報は「自分に必要な具体的な方法」を教えてくれるが、その代わり、和也の「人生の一部」を差し出す必要があるという。
和也は戸惑ったが、男性の言葉には妙な説得力があった。そして何より、FIREを目指すための失敗続きの努力にもう疲れていた。
「人生の一部…って、どういうことですか?」
男性はにっこりと笑い、こう答えた。
「未来のあなたが、少しだけ若返る。それだけですよ。」
【成功への扉】
和也は契約に同意し、本を手に入れた。その本には、彼がこれまで試してこなかった投資の手法や副業のコツが詳細に書かれており、和也はその通りに実行してみた。
すると、驚くほどのスピードで結果が出た。副業の収入は右肩上がり、投資も連続して大きな利益を生み、数か月後には夢に描いていたFIREを実現する生活が目の前に迫っていた。
【代償】
だが、ある日を境に、和也は自分の体調に違和感を覚えるようになった。肌は以前よりも乾燥し、髪には白いものが混じり始めていた。何より、朝起きると異常な疲労感が襲うのだ。
気になって病院に行くと、医師は驚いた顔でこう言った。
「おかしいですね。あなたの身体は、実年齢よりも10年以上老化が進んでいます。」
【もう一度ドアへ】
和也はあの奇妙な建物を思い出し、再びあの路地に足を運んだ。しかし、建物は影も形も消えていた。
途方に暮れた和也の耳元に、あの男性の声が囁いた気がした。
「成功には代償がつきものです。あなたの望みは叶いましたよね?」
和也は成功を手に入れたが、失ったものもあまりにも大きかった。彼は、老化した自分の姿を鏡で見つめながら、心の中で問い続ける。
「これが、本当にFIREの代償だったのか…?」
【エピローグ】
その後、和也の姿を見た者はいないが、路地裏には再びあのドアが現れたという噂が広がった。もしあなたもFIREを目指しているなら、そのドアを開ける前に覚えておいてほしい。
成功には必ず代償があることを。
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