仕事柄、長期の出張が多い私は、2週間ほどの出張が決まると、毎回自分なりのルーティンを作って過ごすことにしている。その出張先での日課は、ホテル周辺をふらりと散歩することだった。仕事終わりの息抜きにちょうどいいし、知らない土地を歩くのは新鮮で楽しい。
今回の出張先も例外ではなかった。地方都市の静かなホテルに泊まり、夕食後に近くの住宅街を散策するのが毎日の習慣になっていた。
目次
出会った不思議な公園
出張3日目、いつものように散歩をしていると、小さな公園を見つけた。住宅街の奥まったところにひっそりとあり、古びたベンチと滑り台がぽつんと置かれている。周りは薄暗く、街灯も少ないため、どこか寂れた印象だった。
「こんなところに公園があったんだ」
特に珍しいものはなかったが、その日はその公園のベンチに座って少し休憩した。夜風が心地よく、頭の中で今日の仕事の振り返りをしていると、どこからか子どもの笑い声が聞こえてきた。
消える声
「こんな時間に子ども?」
不思議に思い周囲を見回したが、誰の姿もない。耳を澄ませていると、再び笑い声が聞こえる。それも滑り台の方からだ。
少し怖くなりつつも滑り台に近づいてみたが、そこにも誰もいなかった。ただ、滑り台の周りに妙に濃い影が落ちていることに気づいた。
「何だろう……?」
じっと見つめていると、影がゆらゆらと揺れた気がした。ぞっとしてその場を離れたが、背後から微かに笑い声が追いかけてきた。
公園がなくなる
次の日、仕事が終わった後、あの公園のことが気になり、再び訪れてみることにした。しかし、そこには公園がなかった。
「ここだったはずなんだけど……」
昨日と同じ道を通り、同じ角を曲がったが、公園があった場所はただの空き地になっていた。滑り台もベンチもなく、雑草がぼうぼうと茂るだけの荒れ地だ。
「え? 昨日は確かにあったのに……」
困惑しながら辺りを歩き回ったが、公園を見つけることはできなかった。その夜は、なんだか釈然としない気持ちでホテルに戻った。
再び現れる公園
翌日、散歩コースを変えてみたが、どうしてもあの公園のことが頭から離れない。6日目の夜、もう一度同じ道を歩いてみると、驚いたことに公園が再びそこにあった。
「戻ってる……?」
こないだはただの空き地だった場所に、また滑り台やベンチがあり、全体が淡い光に包まれているように見えた。まるで異世界に迷い込んだような感覚だった。
その時、滑り台の上に人影が見えた。子どもだろうか。小さな体が滑り台の上でこちらをじっと見つめている。
「誰……?」
声をかけると、影はすっと消えた。
公園の秘密
その後、地元の人に話を聞いてみると、その場所には昔、公園があったという。しかし10年前に閉鎖され、現在は完全に取り壊されているとのことだった。
「その公園、夜になるとたまに現れるって噂ですよ。滑り台の近くで遊んでた子どもが事故で亡くなったんだって……」
そんな話を聞き、あの影や笑い声の正体が何だったのか、恐ろしいような、でも少し切ない気持ちになった。
それから
出張が終わり、帰宅した後も、あの公園のことが頭から離れない。あれは夢だったのか、現実だったのか、今でも分からない。
ただ、あの場所で感じた静かな風の感触と、遠くから聞こえる笑い声だけは、妙に鮮明に思い出せるのだ。
もしかすると、あの公園はまだどこかで誰かを待っているのかもしれない――。
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