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誰かが残したゲームのセーブデータ 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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大学生の僕は、休日になると古びたゲームショップを巡るのが趣味だ。特に、中古のゲームソフトを探し歩くのが楽しくて仕方がない。その日も、近所の小さな店で見つけたレトロゲームソフトに心を奪われていた。

それは、1990年代に流行したRPGのカセットだった。表面のラベルは少し剥がれていたけれど、名前がかすかに読めた。子どもの頃に遊んだことのある懐かしいタイトルだったこともあり、迷わず購入した。

不思議なセーブデータ

帰宅してゲーム機にソフトを差し込み、電源を入れると、懐かしいオープニングが流れ始めた。古いドット絵と軽快なBGMが、子どもの頃の記憶を呼び起こすようだった。

「さて、新しいデータで始めるか……」

と思ったが、ふと「続きから」という選択肢に目が止まった。中古ソフトにはよくあることだ。誰かが残したセーブデータがそのまま消されずに残っているのだろう。

軽い気持ちでそのデータを選んでみると、主人公は物語の最初ではなく、ゲーム中盤の村に立っていた。

見知らぬ冒険者

そのセーブデータは、明らかに丁寧に進められたものだった。パーティーの装備やレベルがしっかり整えられ、アイテムも必要なものがきちんと揃っている。だが、不思議なことに、主人公の名前が「ありがとう」となっていた。

「なんでこんな名前……?」

さらに不思議だったのは、ゲーム中のNPCたちが話すセリフだった。通常ならランダムで決まるセリフのはずなのに、どれも特定の誰かに向けられているようだった。

「君のおかげで村が救われたよ。」
「これからも頑張ってね、ありがとうさん。」

まるで、このデータを残した誰かが、ゲームの中で感謝されているような気がした。

不思議なプレイログ

気になってそのデータを進めてみると、主人公たちはある洞窟にいた。その場所は、通常のプレイではあまり訪れる必要のない場所だった。

洞窟の奥に進むと、イベントのない小さな部屋があり、宝箱が一つだけ置かれていた。中を開けると、ゲームには登場しないはずのアイテム「手紙」が出てきた。

手紙を選択すると、画面にこんなメッセージが表示された。

「この冒険を遊んでくれてありがとう。もしこのセーブデータを見つけたら、君もこの世界を楽しんでくれるとうれしいです。」

その一文に、なんとも言えない温かさが胸に広がった。

過去からの贈り物

そのデータは、どこかの誰かが時間をかけて作り上げたものだったのだろう。ゲームの中の世界を最大限楽しみ、自分なりの感謝や思いを込めて残したものだったのかもしれない。

僕はそのセーブデータを消さず、そのまま新しいデータを作り、冒険を始めた。

そして、自分の冒険が終わった後、同じように新しいメッセージを残してデータを保存した。

「次にこのデータを見つけた人へ。この世界を楽しんでくださいね。」

誰かに届けたい思い

ゲームの冒険は、データが残る限り次の誰かへと引き継がれる。あの「ありがとう」と名付けられた主人公が教えてくれたのは、ゲームという世界を通して、人と人が繋がる不思議な感覚だった。

僕が残したメッセージも、いつか見知らぬ誰かの手に届き、その人にとっての「ありがとう」になってくれればいいと思う。



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