目次
プロローグ
優菜(ゆうな)は数週間前から、毎晩同じ夢に悩まされていた。夢の中で彼女は古い洋館の中を歩いている。冷たい空気が肌にまとわりつき、木製の床が軋む音だけが響く。夢の中で彼女は迷うことなく廊下を進み、必ず最後に一枚の大きな鏡の前で立ち止まる。
鏡には自分自身が映っているはずなのに、そこに映るのは見知らぬ誰かの顔。その顔は無表情だが、どこか助けを求めているような悲しげな目をしていた。
目が覚めるたび、優菜は胸の奥が締めつけられるような感覚に襲われる。その夢が現実とは無関係だと信じたかったが、ある日、インターネットで偶然夢に出てきた洋館とそっくりの建物を見つけてしまう。
その洋館は郊外にある、明治時代に建てられた古い屋敷だった。興味と不安が入り混じる中、優菜は思い切ってその場所を訪れる決意をする。
実在の洋館
洋館に足を踏み入れると、夢で見た光景が目の前に広がった。壁にかかった絵画、長い廊下、そして独特の古い木の匂いまで同じだった。
「まるで夢の中に戻ってきたみたい……。」
優菜は夢と現実が入り混じる感覚に陥りながらも、奥へと進んでいった。廊下を抜け、夢で何度も歩いた階段を上ると、ついに例の鏡が目の前に現れた。
その瞬間、彼女の胸にざわめきが広がる。鏡に近づくと、そこには夢で見たのと同じ、見知らぬ人物の顔が映っていた。それは短い髪に大きな瞳の女性で、優菜とは似ても似つかない顔だった。
鏡の中の女性が突然、口を開いた。
「助けて……。」
優菜は驚いて後ずさった。現実の鏡が話すはずがない。しかし、その声は確かに耳に届いていた。
鏡の中の人物
鏡の中の女性は、自分が優菜の遠い親戚であることを告げた。彼女の名前は玲奈(れいな)。数十年前に消息を絶った人物で、家族間でも忘れられつつあった存在だった。
玲奈は、この洋館で何か恐ろしい出来事に巻き込まれ、魂が鏡の中に囚われてしまったという。
「ここから出たいの。私が何に囚われたのか、真実を探して……。」
玲奈の言葉に優菜は恐怖を覚えながらも、放っておくことはできなかった。
「どうやって助ければいいの?」
玲奈は鏡の中から静かに語りかけた。
「この館の中にある“最後の手紙”を探して。そこに全てが書かれているはず……。」
館の謎
玲奈の言葉を信じ、優菜は館の中を探索することにした。薄暗い部屋には埃をかぶった家具や古い本が散らばり、どこも長年手入れがされていない様子だった。
廊下を進むうち、優菜はふと壁にかかった写真に目を留めた。そこには若い玲奈の姿が写っていた。彼女は他の家族らしき人々と並んで微笑んでいるが、その目だけがどこか怯えているように見えた。
さらに調査を進めると、書斎の机の中から一通の封筒を見つけた。それは「玲奈の日記」と書かれた紙束だった。
真実
日記を読み進めると、玲奈が家族からある秘密を隠されていたことが分かった。彼女の家系には代々、特定の「鏡」にまつわる呪いがあり、その呪いを解除するには、血縁者の一人が鏡の中に囚われる運命にあったのだ。
玲奈はその「犠牲者」に選ばれたのだった。彼女は家族のために犠牲になるしかない運命を受け入れ、最後に手紙を残してこの館に閉じこもった。そして、鏡の中に囚われ続けていたのだ。
「でも、助ける方法がある……。」
手紙にはこう書かれていた。
「私を解放するには、血を分けた家族の力が必要。」
解放の儀式
玲奈の指示に従い、優菜は館に残された古い儀式の道具を使って解放の儀式を行った。鏡の前で静かに祈りを捧げると、鏡の中の玲奈の姿が徐々に薄れていく。
最後に玲奈は微笑み、こう言った。
「ありがとう……優菜。またどこかで会える日を楽しみにしているわ。」
その瞬間、鏡の表面がひび割れる音を立てて砕け散り、玲奈の姿は消えた。
結末
儀式を終えた優菜は洋館を後にした。鏡は壊れ、玲奈の魂は解放されたが、彼女の温かい声だけが心の中に残っていた。
その後、優菜はあの洋館に行くことはなかった。しかし、夢の中で鏡を見るたびに、もう一人の自分が微笑んでいるような気がした――。
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