毎晩、同じ夢を見る。古びた洋館の中を、無言で歩き続ける夢だ。廊下は薄暗く、壁には剥がれた壁紙が見える。腐った木の匂いさえ感じるほどのリアルな夢だった。
そして、必ず最後に一枚の大きな鏡の前で足を止める。
鏡に映るはずの自分の顔――それが、どうしても見知らぬ人の顔になっているのだ。
その顔は、どこか怯えた表情を浮かべている。その視線が自分を見つめていると気づいた瞬間、僕は必ず目を覚ます。
目次
洋館の実在
ある日、インターネットで偶然見つけた記事に、あの夢に出てくる洋館とそっくりの建物が載っていた。地方の廃墟として知られるその洋館の写真を見た瞬間、全身に鳥肌が立った。
「ここだ……夢の中の場所と同じだ。」
夢でしか見たことのないはずの場所が現実に存在している。怖さよりも、なぜか確かめたい気持ちが強くなり、翌日、その洋館へ向かうことを決めた。
洋館の中へ
洋館は、荒れ果てた森の奥にひっそりと立っていた。門扉は錆びつき、蔦が絡まっている。中へ入ると、夢で歩いた通りの廊下が広がっていた。
「夢と同じだ……」
足元がぎしぎしと音を立てる木の床を歩きながら、彼女は夢の中の記憶に導かれるように進んだ。廊下の突き当たりにあった部屋の扉を開けると、そこには見覚えのある大きな鏡が掛かっていた。
鏡の中の対話
鏡の前に立つと、夢の中と同じように見知らぬ顔が映っていた。その顔は若い女性のものだった。目は悲しげで、何かを訴えかけるように動いている。
その瞬間、彼女の周りの空気が凍りついたように感じた。時間が止まったかのように、洋館の音が消え、鏡の中の顔が口を開いた。
「お願い……助けて……」
その声は震えていて、どこか懐かしさを感じさせるものだった。
隠された真実
鏡の中の女性は、彼女の遠い親戚にあたる人物だった。その親戚は、数十年前に失踪しており、家族間でも語られることの少ない存在だった。
「私はこの洋館で命を奪われ、鏡に囚われたの……どうか、この呪いを解いてほしい。」
彼女は恐怖に震えながらも、親戚の言葉に耳を傾けた。そして、洋館の中に隠された何かが、真相を明らかにする鍵だと言われた。
手がかりを探す
彼女は、鏡の中の女性が指し示す通りに、洋館を探索した。書斎の机の引き出しの中から、古びた日記が見つかった。その日記には、この洋館で行われていた奇妙な儀式について記されていた。
「魂を鏡に封じ込め、永遠に囚われる術……」
日記には、儀式を行った後、何らかのトラブルで参加者の一人が命を奪われたと書かれていた。その被害者こそが、彼女の親戚だった。
呪いの解除
鏡の中の女性は、呪いを解くには日記に記された儀式を逆に行う必要があると語った。
彼女は指示に従い、洋館の中央にあるホールに向かった。日記の通り、キャンドルを灯し、女性の名前を唱えると、鏡が淡い光を放ち始めた。
「ありがとう……」
そう言い残すと、鏡の中の女性の顔はふっと消え、鏡には自分の姿が映るだけになった。
解放された洋館
その後、洋館を後にする時、彼女は背後を振り返った。夢で何度も見た恐ろしい場所が、どこか静かな眠りに入ったような穏やかな雰囲気を纏っていた。
帰宅して調べたところ、彼女の親戚の失踪事件についても、わずかな記録が見つかった。その事実を知った時、彼女は夢で見た顔が現実のものだったのだと改めて感じた。
そして、それ以来、夢の中で洋館が現れることはなくなった――。
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