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駅前の不思議な水 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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仕事帰り、いつものように最寄り駅の改札を出ると、見慣れない光景が目に入った。

駅前の広場に、簡素なテーブルが一つ置かれ、その上には何本ものペットボトルが並べられていた。手書きの看板には、「特別な水 500円」と書かれている。

「何だろう、これ……?」

奇妙に思いつつも、疲れていた僕はそのまま通り過ぎようとした。

だが、ちらりとテーブルの店員を見ると、若い女性が一人で立っていた。可愛らしい顔立ちの彼女は、どこか心細げに人通りを眺めている。

客足はゼロだった。

なぜか買ってしまった

「全然売れてないんだろうな……」

そんなことを思いながら視線を外そうとした瞬間、彼女と目が合ってしまった。

「あっ……」

彼女の視線に一瞬戸惑ったが、申し訳なさそうな笑顔を見ていると、なぜかその場を通り過ぎるのがためらわれた。気がつけば、足が自然とテーブルに向かっていた。

「えっと……これ、どんな水なんですか?」

軽い気持ちで声をかけると、彼女は嬉しそうに説明を始めた。

「この水は、特別な山で採れた湧き水なんです。すごく純粋で、飲むと心が軽くなると言われていて……ぜひ一度試してみてください!」

正直、説明は曖昧だったが、500円という値段にしてはやけに高級感のあるペットボトルだった。そして、何より彼女の一生懸命な様子に心を打たれ、つい財布を取り出していた。

「じゃあ、1本ください。」

そう言って渡されたボトルには、「清らかの泉」とだけ書かれていた。

家で飲んだ水

家に帰ると、買った水をキッチンのテーブルに置き、とりあえず夕飯を済ませた。

「心が軽くなる水、ねえ……」

半信半疑ながら、ペットボトルを開けて一口飲んでみた。

その瞬間、驚いた。

「これ、うまい……!」

普通の水とは明らかに違った。透き通るような冷たさが体中に広がり、喉を通るたびに、心がふわっと軽くなる感覚があった。まるで、長年の疲れやストレスが溶けていくようだった。

不思議な出来事

その夜、不思議な夢を見た。夢の中で、僕は青々とした山の中を歩いていた。どこかで見たことがあるような風景だったが、思い出せない。

山奥には小さな泉があり、湧き水が静かに流れていた。泉のそばにはあの店員の女性が立っていて、にっこりと微笑みながら何かを言おうとしていた。

「……ありがとう……」

彼女がそう呟いた瞬間、夢から覚めた。

目が覚めた時、なんとも言えない心地よさが体中に広がっていた。

水の謎

翌日、駅前に同じ場所で水を売っていた女性をもう一度見かけた。

気になって再び近づいたが、テーブルの上にはペットボトルが1本も置かれていなかった。

「あれ、昨日の水はもう売り切れですか?」

そう尋ねると、彼女は首を振りながら微笑んだ。

「いえ、もうお店を閉めるんです。買ってくださってありがとうございました。」

それだけを言うと、彼女はテーブルを片付け始めた。

その後、彼女が姿を消すまで見ていたが、なぜかその瞬間、深い安堵感に包まれた。

今でも思い出す

あの水が何だったのかは今でも分からない。あの女性がどこから来たのかも謎のままだ。

だが、あのペットボトルの水を飲んだ夜以来、僕の心は以前より穏やかになり、少しずつ仕事のストレスにも耐えられるようになった。

まるで、あの水が僕の中に眠っていた何かを癒してくれたかのようだった。

それ以来、駅前を通るたびにあのテーブルを探してしまう自分がいる。もしかすると、再びあの水に出会える日が来るかもしれない――そんな期待を抱きながら。



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