夜中、ふと目が覚めた。時計を見ると午前2時を少し過ぎたところ。いつもなら二度寝してしまうところだが、その日は妙な胸騒ぎがした。
家の中はしんと静まり返っている。遠くで風の音が聞こえるだけで、特に変わったことはないはずだった。
だが、何かがおかしい――そう感じるのに時間はかからなかった。
目次
玄関に響く音
その時、コン……コン……という音が玄関から聞こえてきた。
「誰だ?」
声を出す勇気はなく、布団をかぶったまま耳を澄ませた。音は規則的に続いている。誰かが玄関の外で何かを叩いているようだった。
「こんな時間に?」
心臓が高鳴るのを感じながらも、なんとか勇気を振り絞って玄関へ向かった。
誰もいない玄関
慎重に覗き穴を覗いたが、外には誰もいなかった。
「気のせいか……?」
そう思いながらもドアを少しだけ開けて外を確認した。
だが、そこには誰の姿もなかった。ただ、玄関のコンクリートに奇妙な足跡がついていた。裸足の足跡だ。それも小さな子どものようなサイズだった。
夜露で湿ったような跡がはっきりと玄関の前から庭の方へ続いている。
「何だよ、これ……」
不気味さを覚えながらも、気にしすぎだと思い直し、ドアを閉めて寝室に戻った。
翌朝の発見
翌朝、恐る恐る玄関を確認すると、足跡は完全に消えていた。夜露だったから乾いたのだろうと自分に言い聞かせたが、どこか違和感が拭えない。
それから数日、夜中に目が覚めることが増えた。何も音はしないのに、妙に不安な気持ちが続いていた。
そして、一週間後の夜――また玄関から音が聞こえてきた。
足跡の先
「今度はちゃんと確かめてやる。」
懐中電灯を手に玄関を開けると、やはり足跡があった。だが、今回は玄関から家の中へ続いていた。
「どういうことだ……?」
足跡を辿ると、リビングを通り抜け、階段へ続いている。心臓が喉まで飛び出しそうなほど高鳴りながら、足跡を追った。
階段を上り、足跡が寝室の前で途切れているのを見つけた。
鏡に映るもの
恐る恐る寝室に入ると、部屋には誰もいなかった。
だが、鏡を見た瞬間、全身が凍りついた。
鏡には、自分の後ろに小さな子どもの姿が映っていた。濡れた髪、白い顔、そして何かを探すような目つきでじっとこちらを見ている。
振り返るとそこには誰もいなかった。だが、鏡の中の子どもは消えずに、静かに手を上げ、こう言った。
「返して。」
消えた足跡
その後、鏡の中の子どもはスッと消えた。慌てて玄関を確認すると、足跡も跡形もなく消えていた。
それ以来、その足跡を見ることはなかったが、夜中に目が覚めるたび、玄関を確認せずにはいられない。
「返して」と言った子どもは何を求めていたのだろうか――。
あの夜から、何を返せばいいのか、僕は考え続けている。
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