目次
夜遅くの帰宅
タクヤは、仕事が終わると深夜になっていた。オフィスを出る頃には街は静まり返り、人気のない道を歩いてマンションに帰るのが日課だ。
タクヤが住んでいるのは築30年の中層マンション。エレベーターは少し古く、時々軋む音がするのが気になっていたが、深夜の疲れた体には階段を使う気力もない。
その夜もいつも通りエレベーターに乗り込んだ。
奇妙な異変
「4階か……早くシャワー浴びて寝よう。」
タクヤはボタンを押し、ドアが閉まるのを待った。しかし、ドアが閉まりかけた瞬間、ギリギリで誰かの手が挟まるように伸びてきた。
驚いてタクヤは後ずさりしたが、手の持ち主は見えなかった。代わりに、ドアの外には黒い影のようなものがぼんやりと揺れているだけだった。
「……誰だ?」
思わず声をかけたが、影はそのまま消えるようにエレベーターに乗り込んできた。
見えない“誰か”
エレベーターは動き出したが、タクヤの心はざわついていた。
誰もいないはずなのに、後ろに気配を感じる。鏡越しに背後を確認しようとしても、映るのはタクヤ一人だけ。
「疲れてるのかな……。」
そう思いながらも、不安が消えることはなかった。
行き先ボタン
3階に到着した時、エレベーターが一度停止した。しかし、誰も乗ってこない。
「なんだよ……。」
ドアが閉まりかけたその瞬間――
「5階」
という低い声が聞こえ、行き先ボタンの「5階」が勝手に点灯した。
「えっ?」
タクヤは驚き、辺りを見回したが、やはりエレベーターには誰もいない。それどころか、鏡に映る自分の背後が妙にぼやけていることに気づき、冷たい汗が背中を伝った。
5階の扉
エレベーターが4階には止まらず5階に到着すると、ドアが開いた。だが、そこには誰もおらず、薄暗い廊下が広がっているだけだった。
タクヤは思わずエレベーターを降りようとしたが、何かが足を引っ張るような感覚がし、動けなくなった。
「降りるな……」
聞こえたのは確かに自分の耳元からだった。
真実の足音
恐怖に震えながらタクヤは「閉じる」ボタンを連打した。エレベーターのドアが閉まり、動き出す。
すると、廊下の奥から足音が近づいてくる音が聞こえた。ゆっくり、確実に、こちらに向かってくる足音だった。
誰もいないはずの廊下で、音だけが響く。
自分の部屋での異変
ようやく4階に戻り、タクヤは自分の部屋に飛び込むように帰った。玄関の鍵をかけ、息を整える。
「疲れてるだけだ……ただの気のせい……。」
そう自分に言い聞かせながらシャワーを浴び、ベッドに横になった。しかし、眠れないまま時間が過ぎ、深夜2時頃――
「5階……。」
また耳元で低い声が響いた。振り返ると、部屋の隅に黒い影がぼんやりと立っていた。
最後の足音
タクヤは悲鳴を上げて起き上がり、玄関に走った。しかし、玄関ドアを開けると外には誰もいない。
ただ、5階に向かうエレベーターの音だけが静かに響いていた――。
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