目次
プロローグ
高層ビルのエレベーターに乗ったとき、目的の階のボタンを押すだけ――それが普通だ。しかし、もしそこに存在しないはずの階が現れたら、あなたはどうするだろうか?
これは、ある会社員が体験した、奇妙で不気味な出来事の話である。
第一章:いつもと違うエレベーター
主人公の翔太(しょうた)は都内のオフィスビルで働く会社員だ。彼が勤務するビルは地上8階建てで、エレベーターは毎日使い慣れているものだった。
残業をしているある日、時刻は深夜11時を過ぎていた。ビルの前の喫煙所でタバコを吸った後、翔太は疲れた足取りでエレベーターに乗り込み、自分のオフィスがある5階のボタンを押した。
すると、何の前触れもなく、エレベーターのボタンパネルに「9」という見慣れないボタンが点灯していることに気づいた。
「9階なんてないはずだよな……?」
ビルの構造上、8階が最上階であることは間違いない。それなのに、9階のボタンは光っている。翔太は気味が悪くなりながらも、疲れでぼんやりした頭では深く考えられず、そのまま5階で降りた。
しかし、その奇妙な出来事は翌日も、さらにその次の日も続いた。
第二章:押される9階
数日後の夜、再びタバコをを終えた翔太はエレベーターに乗り込んだ。今回は、彼がボタンを押す前に「9階」のボタンが勝手に点灯した。
「誰が押したんだ?」
恐る恐るエレベーターを見回したが、もちろん誰もいない。翔太は思い切ってエレベーターを降りようとしたが、その瞬間、扉が音もなく閉じ、エレベーターが動き出した。
行き先は「9階」だった。
翔太の心臓は激しく鼓動し、冷や汗が止まらない。エレベーターは普段よりも長く揺れながら上昇を続け、ようやく「9階」に到着した。
扉が開くと、そこには薄暗い廊下が続いていた。蛍光灯のちらつく音が耳に響き、不気味なほどの静けさが支配している。
翔太は足を踏み出せなかった。恐怖に駆られ、扉が閉じるのを待つことしかできなかった。
第三章:9階の住人
翌朝、翔太は同僚にその出来事を話した。すると、年配の社員が怪訝そうな顔をしながら、こう言った。
「9階? このビルにそんな階はないよ。だけどな……昔、建設中に作業員が事故で亡くなったって話は聞いたことがある。」
その話を聞いてさらに不安が募る翔太だったが、具体的な事故の詳細は誰も知らなかった。
その夜も、翔太は怖さをこらえてエレベーターに乗り込んだ。ボタンパネルには再び「9階」が点灯していた。
「いい加減にしてくれよ……!」
翔太がボタンを無理やり押し消そうとすると、エレベーター内に冷たい風が吹き抜けた。
そして突然、背後から声が聞こえた。
「来てくれるのを待ってた。」
振り返ると、そこには作業服を着た中年男性が立っていた。顔は青白く、虚ろな目が翔太をじっと見つめている。
第四章:囚われたエレベーター
恐怖のあまり翔太はエレベーターの隅に押しやられるようにして身を縮めた。すると、男が静かに口を開いた。
「ここは、俺たちの階だ。ずっとここで働いているんだ。」
その言葉とともに、エレベーターの扉が開いた。翔太の目の前には、またしても「9階」の薄暗い廊下が広がっていた。だが今度は違った。廊下の奥から、複数の人影がこちらを見つめているのが見えた。
彼らはみな作業服姿で、どこか現実味のない存在感を放っていた。
翔太は恐怖に耐えられず、思わず叫び声を上げてエレベーターのボタンを叩いた。幸い、扉が閉まり、エレベーターは再び動き始めた。
結末
翌日、翔太は会社に欠勤の連絡を入れた。二度とそのビルには近づかないと誓ったのだ。
しかし、同僚からの連絡で、翔太が驚愕の事実を知ることになる。
「昨日、夜遅くにビルで火災報知器が作動したらしいんだけどさ……9階のセンサーが反応したって話だよ。」
9階が実在しないはずのビル。その存在しない階からの報知――。
翔太はそれ以来、他の場所で働き始めたが、エレベーターに乗るたびにボタンパネルに9階が追加されていないか、確認せずにはいられなくなった。
そして彼は時々夢を見る。薄暗い廊下に立つ作業員たちが、自分をじっと見つめている夢を――。
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