怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

赤い文字の正体 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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深夜の足音

サトルは、仕事が終わるといつも深夜の帰宅になる忙しい毎日を送っていた。その日も終電間際の電車に揺られ、疲れた体で家に帰り着いた。

玄関を開けると、静まり返った家の中で「コツ……コツ……」と足音が響いていた。

「……家族が起きてるのか?」

家族は全員2階の寝室で寝ているはずだ。リビングの電気も消えており、足音の主は見当たらない。

テーブルの上の紙

恐る恐るリビングの電気をつけると、誰もいないはずの部屋が無人であることを確認してほっとした。

だが、テーブルの上に何かが置かれているのを見て、サトルの背筋は凍りついた。

それは1枚の紙。赤いインクで、こう書かれていた。

「お前を見ている」

「……誰がこんなことを?」

サトルは慌てて家中を調べたが、特に異変はなく、ドアや窓の鍵もきちんとかかっていた。

誰も知らない紙

翌朝、サトルは家族にその紙を見せた。しかし、誰も心当たりがないと言う。

「冗談だろ?こんなことして怖がらせるのやめてくれよ。」

「そんなことしないわよ。」

その言葉を信じるしかないサトルは、不安を抱えながらもその日も仕事に出かけた。

増えていく赤い紙

その夜、再び深夜に帰宅したサトルを待っていたのは、リビングのテーブルに置かれた2枚目の紙だった。

「逃げても無駄だ」

次の日には3枚目、その翌日には4枚目――。

「誰だ、こんなことをしてるのは!」

サトルは怒りと恐怖で震えながら、その紙を毎晩捨て続けた。しかし、捨てても捨てても、翌朝には新たな紙が増えている。

家の異変

紙の内容は日に日に不気味さを増していった。

「お前の罪を知っている」
「いつまでも見ている」

そんな中、サトルは家の中にいると、誰かに見られているような視線を感じるようになった。特に夜、リビングに入ると背後に何かの気配がする。

家族も異変に気づき始めた。

「リビングがなんだか気味悪い……。」

家族全員が不安を感じ始めた頃、サトルは決心した。

「この家を出よう。」

家を離れた後

引っ越しの準備を急いで進め、家を出たサトルたち。新しい家に移り住んでから、あの紙は二度と現れることはなかった。

だが、気になることがあった。引っ越し作業の最後に荷物をまとめていたサトルが、リビングの隅に古いタンスを見つけたのだ。

タンスの中には、びっしりと赤い文字で埋め尽くされた無数の紙が詰まっていた。

最後に見つけた1枚の紙には、こう書かれていた。

「ここに戻ってこい」



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