怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

赤い文字 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

会社員の拓也は、終電で帰宅する日々を送っていた。ある夜、疲れ切った体で家の鍵を開け、リビングに向かう途中、不意に耳にした足音に足を止めた。

「誰か起きてるのか…?」

家族は妻と子供の3人暮らしだが、時計は深夜1時を指している。誰も起きている時間ではないはずだ。

恐る恐るリビングに向かうと、電気は消え、静まり返っている。

「気のせいか…?」

安堵しかけたその瞬間、拓也の目にテーブルの上の紙が映った。

【赤い文字の紙】

蛍光灯の明かりの下、紙には赤いインクで意味不明な文字がびっしりと書かれていた。

「カタリトムユ、ミコリカナ…」

その言葉はどこか耳障りで、不安を掻き立てるような響きを持っていた。だが、それ以上に気になったのは、家族の誰かがこんなことをしたのだろうかという疑念だった。

翌朝、妻に昨夜の出来事を話したが、彼女は首をかしげるばかりだった。
「そんな紙、知らないわよ。」

子供に聞いても同じだった。

気味が悪くなった拓也はその紙をゴミ箱に捨てた。

【増える紙】

翌日、また深夜に帰宅した拓也は、リビングで再び赤い文字の紙を見つけた。昨日の紙よりも文字数が増えている。

「カタリトムユ、ミコリカナ、ウモリトカ…」

「またかよ…」

紙を手に取りゴミ箱に捨てたが、それが繰り返し起こるようになった。

3日目、4日目…紙は増え続け、文字の数も次第に多くなり、より不気味さを増していった。

「カタリトムユ、ミコリカナ、ウモリトカ、ナミトサカ…」

「何なんだよ、これ…」

捨てるのをやめた拓也は、誰かがいたずらをしているのではないかと家中を調べたが、窓やドアに異常はなく、侵入された形跡もない。

【監視される恐怖】

紙が増え始めて1週間が経った頃、拓也は奇妙な感覚を覚えるようになった。それは、「誰かに見られている」という感覚だった。

帰宅してリビングに入ると、まるで目が背後に張り付いているような錯覚を覚える。紙が置かれる音を聞くことはなかったが、その存在がどんどん身近に迫ってくる気がした。

「…もう無理だ。」

彼は意を決して、リビングに仕掛けた防犯カメラを確認することにした。

【カメラに映るもの】

翌朝、夜中に撮影した映像を確認すると、家族が寝静まる深夜2時過ぎ、リビングのテーブルに異変が起きていた。

紙が突然現れるのだ。誰も入っていないのに、テーブルの上に赤い文字の紙がゆっくりと置かれていく。

「嘘だろ…」

さらに映像を再生していくと、紙を置く「何か」の影が一瞬だけ映った。それは、人間のように見えるが、異様に細長い手足を持ち、無音で動いていた。

恐怖で震える手でカメラを止めると、その瞬間、リビングからかすかな物音が聞こえた。

【家を出る決意】

拓也は家族には何も言わず、次の日に引っ越しを決意した。幸い、妻も最近家の中で妙な気配を感じていたらしく、引っ越しにはすぐに同意してくれた。

数週間後、家族で新しい住居に移り住んだ拓也は、以前の家での出来事を忘れるよう努めた。しかし、新居に移った最初の夜、リビングに入った彼の目に飛び込んできたのは…

テーブルの上に置かれた、赤い文字の紙だった。

【エピローグ】

その紙には、こう書かれていた。

「カタリトムユ、ナカマニカエレ…」

彼の背筋に冷たいものが走った。「仲間に帰れ」と読めるその文字列が意味するのは、果たして――。

もし、深夜に家の中で紙が増えていくことに気づいたら、それはあなたの何かを求める存在が近づいている証拠かもしれません。



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