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占い師がくれた食べ物:消えたパワハラ上司の謎 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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仕事のストレスは誰にでもあるものだが、僕のそれは少し特殊だった。

数か月前、部署の上司が異動になり、新しい上司がやってきた。彼は社内で「クラッシャー上司」と呼ばれている人物だった。部下を追い詰め、精神的に参らせるのが得意技のような男だ。

案の定、僕も彼の標的にされてしまい、毎日のように嫌味や理不尽な指示に苦しめられていた。

路地裏の占い師

そんなある日、昼休みに外の定食屋で昼食を済ませた帰り道。会社に戻ろうと路地裏を歩いていると、小さなテーブルを開いた占い師に声をかけられた。

「あなた、今とても悩んでいるでしょう?」

見るからに怪しい風貌の中年女性だったが、その言葉には妙な力があった。

「……まあ、少し。」

軽く受け流そうとしたが、彼女は畳みかけるように続けた。

「その悩み、解決できますよ。どうです?占ってみませんか?」

時計を見ると、昼休みの残り時間には少し余裕があった。半信半疑で椅子に座ると、彼女はカードを取り出し、不思議な呪文のような言葉を口にしながら占いを始めた。

不気味な予言と渡された食べ物

占いの結果、彼女はズバリと言った。

「あなたの上司――最悪ですね。そんな人間の言うことなんて聞く必要ありません。」

僕はギクリとした。なぜ彼女が上司の存在を知っているのかも分からないし、なぜその性格まで的確に言い当てられるのかも謎だった。

「でも、大丈夫です。」

そう言いながら、彼女は包み紙に包まれた奇妙な食べ物を僕に差し出した。

「これをその上司に食べさせれば、すべて解決します。」

上司が勝手に食べた

僕は、半分笑い話のつもりでその食べ物を会社に持ち帰った。さすがに占い師の言葉を真に受けて、そんなものを上司に食べさせるわけにはいかない。

デスクに置いた包みを見ながら、どうしたものかと考えていた。

その時、上司がやってきた。

「おい、また無駄なことしてるんじゃないだろうな?」

いつものように嫌味を言われながら耐えていると、彼の視線がデスクの包みに止まった。

「何だこれ、うまそうだな。」

そして、僕が止める間もなく、勝手に包みを開けて食べ始めた。

「まあまあだな。」

そう言って彼は去って行った。

上司が会社に来なくなった

翌日、上司は会社に来なかった。最初はただの体調不良かと思ったが、その後も彼の姿を見ることはなかった。

同僚たちの話では、どうやら精神的に参ってしまったらしい。

「聞いたか?あの人、完全におかしくなったらしいぞ。」

「本当に?まあ、あれだけ周りを追い詰めてたら自分にも跳ね返ってくるか。」

そんな噂話を聞きながら、僕の心には妙な違和感が残った。

「あの食べ物……まさか……」

だが、すぐに思い直した。占い師の言葉なんて、ただの偶然に過ぎない。

占い師の行方

その後、何度か路地裏を通ってみたが、占い師の姿を見ることはなかった。

あれは一体何だったのか――上司に何が起きたのか――答えは闇の中だ。

ただ、一つだけ言えるのは、上司がいなくなったおかげで、職場には平穏が戻ったということだ。

奇妙な出来事だったが、結果的に僕は少しだけ救われたのかもしれない。



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