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路地裏の占い師と「呪われた食べ物」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

仕事というものは、時に人生を潰してしまうことがある。主人公の圭太(けいた)は、それを実感していた。

彼の勤める会社では、最近新しく赴任してきた部長が「クラッシャー上司」として悪名高い存在だった。嫌味、パワハラ、理不尽な命令――どれを取っても最悪で、彼の部下たちは次々に追い詰められていた。

「こんな日々がいつまで続くんだろう……。」

疲労とストレスを抱えながらも、圭太は会社へ向かう日々を過ごしていた。

路地裏の占い師

その日、昼休みに定食屋で食事を済ませた圭太は、会社への帰り道で路地裏を通り抜けた。すると、目に留まったのは古びた木製のテーブルを前に座る、一人の占い師だった。

年配の女性で、独特な装飾を身につけたその姿には、どこか異様な雰囲気が漂っていた。

「あなた……悩みがあるでしょ?」

占い師の声に驚いた圭太は足を止めた。

「いいえ、特に――」

「いやいや、わかるのよ。あなた、職場で大変な目に遭っているわね。」

その言葉に圭太は驚いた。

「もしかして……当たっている?」

時計を見ると、まだ少し時間がある。半信半疑のまま、圭太は占い師の言葉に耳を傾けることにした。

不気味な予言

占い師は圭太の手を取ると、何かを読み取るようにじっと見つめた。そして、こう言った。

「あなたの上司……最悪ね。そんなやつの言うことなんて聞く必要ない。」

その言葉は圭太の心に刺さった。まるで自分の苦しみを見透かされているようだった。

「でも、大丈夫。これがあれば、すべて解決するわ。」

そう言って、占い師は小さな包みを手渡してきた。包みを開けると、中には見たこともない奇妙な食べ物が入っていた。

「これを、その上司に食べさせなさい。そしたら、あなたは自由になれる。」

圭太は驚きつつも、占い師の言葉を真に受ける気にはなれなかった。しかし、念のため包みをポケットに入れ、会社に戻った。

上司の異変

デスクに戻った圭太は、奇妙な食べ物をそっと机の上に置いた。

「さすがにこんなもの、食べさせられるわけがないよな……。」

そう思いながら考え込んでいると、例のクラッシャー上司が近づいてきた。

「おい、圭太。また無駄に時間を過ごしてるのか?」

嫌味を言われながら、圭太はいつものように黙って耐えた。しかし、そのとき、上司の目が机の上の包みに向いた。

「なんだこれ? 美味そうじゃないか。」

そう言うと、上司は包みを勝手に開き、中身を手に取ると食べ始めた。

「おいおい……!」

圭太は止めようとしたが、声が出ない。目の前で上司が奇妙な食べ物を口に運ぶのを、ただ見ているしかなかった。

「……まあ、味は悪くないな。」

そう言って、上司は去っていった。

次の日からの静寂

翌日、会社に出勤した圭太は、妙な静けさを感じた。周囲の同僚たちがひそひそと話している。

「どうしたんですか?」

尋ねると、同僚がこう答えた。

「部長、昨日から会社に来てないんだよ。聞いた話だと、精神的に壊れたみたいで……。」

その言葉に、圭太の胸に冷たいものが走った。

「まさか……あの食べ物のせい?」

しかし、そんな非現実的なことがあるはずがないと、圭太は自分を納得させようとした。

占い師の行方

その日から、クラッシャー上司は会社に戻ることはなかった。部下たちは解放され、圭太も自由な日々を取り戻した。

だが、どうしてもあの出来事が頭から離れない。昼休みに再び路地裏を訪れた圭太は、あの占い師を探した。しかし、そこに占い師の姿はなく、テーブルも跡形もなかった。

「あれは一体何だったんだ……?」

謎は残ったままだが、圭太はもう二度と奇妙な食べ物を手にすることはなかった――。



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