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路地裏の占い師がくれた「不思議な食べ物」」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

どこの会社にも、一人や二人は「最悪の上司」と呼ばれる人物がいるものだ。主人公の健司(けんじ)は、そんな上司の下で働くサラリーマンだった。最近、部署に異動してきた新しい上司は「クラッシャー」として社内で悪名高く、日々のストレスに健司は心をすり減らしていた。

第一章:路地裏の出会い

ある日の昼休み、健司は会社の近くにある路地裏の定食屋で昼食を取った後、会社に戻ろうとした。その帰り道、小さなテーブルを開いている一人の占い師に声をかけられた。

「お兄さん、ちょっと悩み事があるんじゃない?」

妙に穏やかで、どこか不思議な雰囲気の占い師だった。健司は普段なら通り過ぎていただろうが、その日は心が弱っていたのか、立ち止まってしまった。

「……まあ、仕事で少し。」

占い師は健司をじっと見つめた後、頷いた。

「分かるよ。その上司、最悪だね。そんなやつの言うことなんて聞かなくていい。でも――私に任せれば、すべて解決するよ。」

健司は時計を確認した。まだ昼休みには少し時間がある。半信半疑で占いを頼むと、占い師は小さな袋から奇妙な食べ物を取り出した。それは黒い球体で、見たこともないような色合いをしていた。

「これをその上司に食べさせなさい。それで全てが解決する。」

そう言って占い師はにっこり笑った。

第二章:会社に戻る

健司はその「変な食べ物」を手に持ったまま会社に戻った。しかし、自分のデスクでそれを見つめながら考え込んだ。

「こんな得体の知れないもの、さすがに食べさせられるわけないだろ。」

たとえどれだけひどい上司であっても、わざと食べさせるのは良心が痛む。しばらく悩みながらも、結局は机の隅に置いてそのまま放置することにした。

その日の午後も、例の上司からの嫌味が飛んできた。

「健司、お前の仕事はいつも遅いんだよ! この程度もこなせないなら、社会人失格だ!」

苛立ちを抑えながら耐えていると、ふと上司の目が健司の机の上に置かれた「変な食べ物」に留まった。

「おい、それ、なんだ? 美味そうじゃないか!」

上司は手を伸ばし、その食べ物を掴むと、健司が止める間もなく口に入れてしまった。

「うん、悪くないな!」

上司はそう言うと、満足げな顔で自分のデスクに戻っていった。健司は呆然としながらも、特に異変が起こる様子はなかった。

第三章:翌日の異変

翌朝、健司が出社すると、同僚たちが何か話し込んでいた。

「おい、聞いたか? 部長、今朝から来てないらしいぞ。」

「昨日、急に体調悪そうだったもんな。聞いた話じゃ、精神崩壊したとか……。」

耳を疑う言葉だった。健司は机に置いていた「変な食べ物」を思い出し、もしやと思った。だが、そんな非現実的なことがあるはずがない。

「いやいや、関係ないよな。ただの偶然だ。」

そう自分に言い聞かせ、健司は日常業務を続けた。

第四章:占い師の不在

その日の昼休み、健司は再び路地裏の占い師のもとを訪れた。しかし、そこにはもう占い師の姿はなかった。テーブルも何もかも、まるで最初から存在していなかったかのように消えていた。

「……なんだったんだ、あの人。」

不思議に思いながらも、それ以上考えるのをやめることにした。

結末

その後、例の上司が会社に戻ることはなかった。新しい上司が着任し、健司の職場環境は劇的に改善された。

だが、健司は今でも時折考える。

「本当に、あの食べ物が原因だったのだろうか?」

真相は闇の中だが、あの日の占い師の笑顔だけが、健司の記憶に深く刻まれているという――。



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