目次
プロローグ
日常の中で利用するバス。その乗り場や行き先は誰もが知っているはずだ。しかし、もしそのバスが「どこでもない場所」に向かっていたら――?
これは、ある男性が友人を探す中で体験した、不思議な出来事の話である。
第一章:友人の失踪
主人公の良太(りょうた)は30代の会社員。週末になると学生時代の友人、直樹(なおき)と一緒に居酒屋で酒を飲むのが楽しみだった。
しかし、ある日を境に直樹と連絡が取れなくなった。電話もメールも返信がなく、SNSも更新されていない。
最初は忙しいのだろうと思っていたが、1週間が過ぎても音沙汰がないため、不安になった良太は直樹の家を訪ねた。
部屋はきちんと片付いており、異変はない。ただ、机の上にあったメモに、奇妙な文字が書かれていた。
「終点行きのバス」
第二章:終点行きのバス
その言葉が頭から離れず、良太は直樹の行きそうな場所を手当たり次第に探し始めた。すると、いつも飲み会帰りに一緒に利用していた古びたバス停がふと頭に浮かんだ。
「もしかして、あそこか……?」
深夜、良太はそのバス停に向かった。辺りはひっそりと静まり返り、時折吹く風が気味悪さを助長する。
バスの時刻表を確認すると、夜中の2時に「終点行き」とだけ書かれた便が記載されていた。
「こんなの見たことないぞ……。」
そう思いながら待っていると、遠くからエンジン音が聞こえてきた。
第三章:異様なバス
現れたバスは、どこか古びていて、窓は黒く曇り、中の様子は見えない。
「……これが『終点行き』?」
恐る恐る乗り込むと、車内には数人の乗客が座っていた。しかし、どの乗客も深くフードを被っており、顔が見えない。
運転手も無言で、ただ行き先を告げるプレートに「終点」とだけ書かれている。
良太は後部座席に腰を下ろし、心臓の鼓動を感じながら窓の外を見た。しかし、バスが動き出してから景色は徐々に見慣れないものへと変わっていった。
第四章:異世界への道
バスが進むにつれ、周囲の風景が現実離れしたものになっていく。青白い月明かりに照らされた森、空中に浮かぶような階段、そして赤い霧が漂う丘――。
良太は不安を覚えながらも、途中で降りる勇気が出なかった。やがてバスは暗いトンネルに入り、視界が完全に真っ暗になった。
「これ、本当にどこに向かってるんだ……?」
その時、バスの車内に聞き覚えのある声が響いた。
「良太……なのか?」
振り返ると、そこには直樹がいた。
第五章:再会と告白
直樹はフードを脱ぎ、驚いた表情で良太を見つめていた。
「どうしてお前がここにいるんだ!」
「それはこっちのセリフだ! 連絡が取れないから探してたんだよ!」
直樹は困惑しながらも、事の次第を話し始めた。彼は数週間前、偶然このバスに乗り込み、不思議な世界に迷い込んだという。その世界は魅惑的で、現実のストレスを忘れさせてくれるような場所だったが、次第に帰れなくなったことに気づいたのだ。
「ここは……異世界だ。俺たちみたいに、現実から逃げたくなった人間を吸い込む場所なんだよ。」
第六章:終点
話をしている間に、バスはついに「終点」に到着した。
扉が開き、乗客たちが無言で降りていく。外には広大な荒野が広がり、空には二つの月が浮かんでいた。
「降りるな!」
直樹が必死に止めるが、良太の足は勝手に動き出していた。扉の外からは囁くような声が聞こえる。
「ここにいれば楽になれる……。」
その時、直樹が良太の手を掴んだ。
「帰るぞ! こんな場所にいるべきじゃない!」
結末
直樹の必死の呼びかけに目を覚ました良太は、なんとかバスに留まった。するとバスが突然動き出し、再びトンネルに入った。
気がつくと、良太と直樹は元のバス停に戻っていた。
「もう……こんなバスには二度と乗らない。」
直樹はそう呟き、二人はその場を離れた。
それ以来、良太は深夜のバス停に近づくことはなかった。しかし時折、夢の中で「終点行き」のバスが再び現れ、自分を誘うような声が聞こえるという――。
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