怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

深夜バスでたどり着いた異世界と友人との再会 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ある夜の帰り道

ケンジは、仕事帰りの深夜バスに揺られていた。

地方都市の郊外に住むケンジは、毎日同じバス路線で家に帰るのが日課だった。この日は特に疲れており、車内に座るとすぐにうとうとし始めた。

車内はほぼ無人。運転手以外には、ケンジともう一人、後ろの方で寝ているように見える乗客がいるだけだった。

不意の異変

ふと目が覚めた時、ケンジはバスが見知らぬ道を走っていることに気づいた。

「こんなところ、いつも通らないぞ……。」

外を見ても、街灯一つない暗闇が続く中、不気味な霧が漂っているだけ。

「運転手さん、道間違えてないですか?」

ケンジは前方に声をかけようと立ち上がったが、運転席には誰もいなかった。

「え……?」

慌てて振り返ると、車内の乗客も消えており、自分だけが取り残されていた。

バスが止まる

バスが急に停車し、ドアが開く音がした。ケンジは恐る恐る外を覗くと、そこには奇妙な街が広がっていた。

見たこともない建物が並び、空は紫がかった不思議な色。道を歩く人々も、どこか異様に静かで、無表情だ。

「どこだよ、ここ……。」

戸惑うケンジの耳に、聞き覚えのある声が届いた。

「ケンジ……久しぶりだな。」

友人との再会

声の主を見て、ケンジは言葉を失った。

そこに立っていたのは、高校時代の親友ヒロユキだった。彼は数年前、事故で亡くなっていたはずだ。

「ヒロユキ……?なんでお前がここにいるんだ?」

ヒロユキは微笑みながら言った。

「お前が乗ったバスが、ここに連れてきたんだよ。ここは俺たちみたいに、“こっち側”に来た人間が集まる場所だ。」

奇妙な街の秘密

ヒロユキによると、この街は現実と異世界の間にある「境界の街」だという。

「ここにいる間は、現実の世界には戻れない。でも、懐かしいものもあるだろう?」

ケンジが街を歩いてみると、高校時代によく通ったゲームセンターや、友人たちと集まった喫茶店がそっくり再現されていた。

「懐かしいけど……俺、現実に戻らないと!」

そう言うと、ヒロユキは少し寂しげな顔をした。

帰り道の選択

「帰れる方法はある。ただし、ここにいる間の記憶は全て消える。それでも戻りたいか?」

ヒロユキの言葉にケンジは戸惑った。この街は不思議と居心地が良く、懐かしい記憶が満ちていた。

「でも、現実で俺を待ってる家族や友達がいるんだ。」

ヒロユキは微笑み、ケンジにバス停を指さした。

「じゃあ、あのバスに乗れ。行先はもう決まってる。」

元の世界へ

ケンジが再びバスに乗り込むと、ヒロユキが手を振って見送ってくれた。

「じゃあな、ケンジ。またどこかで。」

バスは静かに動き出し、街の景色が徐々に消えていく。

気がつくと、ケンジはいつものバス停に立っていた。街は普段と同じ夜の静けさに包まれている。

家に帰ると、ポケットの中に見覚えのないメダルが入っていた。それは、ヒロユキと昔集めたゲーセンのコインだった。



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