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異世界のバス停で会った「もう一人の友人」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

主人公の修二(しゅうじ)は30代の会社員。日々の疲れを癒すため、週末には近くの山へ足を運び、自然の中で過ごすのが趣味だった。

その日も山でリフレッシュした帰り道、修二は最寄りのバス停に向かった。普段と何も変わらないはずの帰り道――だが、そのバスはどこか違っていた。

第一章:不思議なバス

夕方、修二は人気のない山のバス停でバスを待っていた。数分すると、エンジン音が近づき、バスが到着した。

「随分と古いバスだな……。」

車体は古びており、窓は黒く曇っていた。運転手は無言でうなずくだけ。少し不安を感じながらも、修二はバスに乗り込んだ。

車内には数人の乗客が座っていたが、誰も顔を上げず、沈黙を守っていた。バスは静かに走り出し、やがて窓の外の景色が奇妙に変わり始めた。

緑豊かな山道が、赤みを帯びた空と不思議な建物が並ぶ異様な風景に変わっていく。

第二章:異世界の町

バスが止まり、「終点です」という声が聞こえた。修二は見知らぬ町に降り立った。

町はどこか懐かしい雰囲気がありながらも、非現実的だった。街灯は青白く光り、空には二つの太陽が輝いていた。

ふと、目の前の路地から見覚えのある人物が歩いてきた。

「……涼太?」

それは修二の親友、涼太(りょうた)だった。

第三章:かみ合わない会話

「涼太! どうしてここにいるんだ? 俺、知らない場所に迷い込んだみたいなんだ。」

修二が駆け寄ると、涼太は少し驚いた様子で立ち止まった。

「君……誰だい?」

その言葉に修二は混乱した。

「何言ってるんだよ、俺だよ、修二だ! 大学の頃からの親友だろ?」

しかし涼太は首を傾げたまま、「知らない」と答えた。

「俺の名前を知ってるみたいだけど、君とは会ったことがない。この町でずっと暮らしているし、大学なんて行ったこともないよ。」

第四章:もう一人の涼太

涼太の言葉にショックを受けた修二だったが、どこかで「この涼太は自分の知っている涼太ではない」という感覚が芽生え始めた。

会話を続けるうちに、修二は確信した。この涼太は、自分が知っている世界の涼太ではなく、異世界に住む「もう一人の涼太」だったのだ。

彼の話によると、この町ではバスがすべてをつなぐ存在であり、時折、異なる世界からの人間が迷い込んでくることがあるという。

「君もそうだろう? たぶん、君のバスはこの世界に入ってしまったんだ。」

第五章:帰る方法

修二は元の世界に戻る方法を尋ねた。涼太はしばらく考えた後、静かに言った。

「この町には“帰りのバス”がある。でも、どこに現れるかは分からないんだ。」

涼太は親切にも修二を町の中に案内し、帰りのバスを探すのを手伝ってくれた。

道中、二人の会話はどこか奇妙なものだった。修二にとって涼太は長年の親友だが、この涼太にとって修二は見知らぬ他人。それでも、彼の話し方やしぐさには確かに「涼太らしさ」が感じられた。

第六章:別れ

夜が更ける頃、修二は青白い光に包まれたバス停を見つけた。その前には、またしても古びたバスが止まっていた。

涼太は静かに微笑み、修二に言った。

「ここでお別れだね。君がどこの世界から来たのかは分からないけど、きっと戻れるよ。」

修二は感謝の言葉を述べたが、どこか寂しさも感じた。

「俺たちの世界での涼太も、きっと元気にしてるよ。もし彼に会えたら、君のことを思い出すかもしれないな。」

涼太は少し不思議そうな顔をしながらも、手を振った。

結末

修二がバスに乗り、窓の外を見ると、涼太の姿が町の中に消えていくのが見えた。

バスは霧の中を進み、やがて修二は元のバス停に戻っていた。

翌日、修二は涼太に電話をかけた。彼は元気そうな声で応え、修二が体験した不思議な出来事を笑いながら聞いていた。

夜、修二は夢の中で再び二つの太陽が輝く町を見た。その町の路地には、今でも「もう一人の涼太」が歩いている――。



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