怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

廃道を抜けた先で見た光景が忘れられない 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は数年前、友人たちとドライブ旅行をしたとき、決して忘れられない体験をしました。その日は旅先で急な渋滞に巻き込まれ、時間を短縮するためにナビアプリが示した「近道」を選んだのが、全ての始まりでした。

廃道への道

ナビが示したルートは、少し古びた山道でした。舗装はされていましたが、ところどころにヒビが入り、雑草がアスファルトを突き破っています。昼間だったこともあり、特に気にせず進みました。しかし、道を進むにつれ周囲の景色がどんどん寂れていき、次第に車一台がやっと通れるほどの細い道になっていきました。

「あれ?これ、本当に通れるのか?」
運転していた友人が不安そうに呟きました。しかし、ナビの画面では確かに「この先に国道がある」と表示されています。私たちはそのまま進むことにしました。

異様な雰囲気

やがて、道沿いには朽ちたガードレールが見え始めました。木々が鬱蒼と茂り、薄暗い雰囲気が漂います。道路には無数の落ち葉と枝が散乱し、どこか湿っぽい匂いが車内にも入り込んできました。

「これ、使われてない道だろ?」
後部座席に座っていた別の友人が不安げに言いました。それでも戻るには狭すぎる道幅のため、私たちは仕方なく進み続けました。途中、何台もの錆びた車両が道端に放置されているのが見えました。まるで何年も前からここに捨てられているような車たち…。誰も声を上げず、ただ進むことしかできませんでした。

抜けた先の奇妙な光景

やがて道は急な下り坂に差し掛かり、車はゆっくりと山を抜けていきました。そしてついに、視界が開けた場所に出たのです。そこは広場のようになっており、周囲を山に囲まれていました。広場の中心には古びた小さな神社があり、鳥居の木は黒く湿り、苔むしていました。

「なんかヤバくない?」
その場の空気は重苦しく、誰も近寄りたがりませんでした。しかし、一人が車を降りて鳥居に近づき、スマホで写真を撮ろうとしました。その瞬間、彼の顔が真っ青になり、何かを見たかのように慌てて車に駆け戻ってきました。

「人がいた…いや、何か…見られてる気がした。」
彼の震える声に、私たちは急いで車を発進させ、その場を後にしました。

再び戻る道

元の道に戻ろうとしましたが、ナビにはなぜか「目的地に到着しました」と表示され、来た道も地図上では存在しないように見えます。さらに奇妙なことに、道の入り口で見たガードレールや放置車両も消えているのです。周囲は一面の木々に覆われ、来た道が完全に消えていました。

途方に暮れながらも、私たちはなんとか別の道を探し、ようやく山を抜けることができました。しかし、抜けた先で車内にいた全員が気づきました。
「…これ、行きと同じ場所じゃないよな?」

見慣れた国道に出たはずなのに、どこか景色が違う。信号機の色合い、看板の文字、建物の形…何もかもが微妙に異なっているのです。それは本当に私たちが元いた世界なのか、今でも確信が持てません。

その後の話

その後、しばらく国道を走っていると、景色や信号機、看板など、見慣れたものに戻りました。
あの神社で写真を撮った友人のスマホには、なぜか写真が一枚も残っていませんでした。ただ、写真アプリを開くと、全てのデータが消えたはずなのに、なぜか画面が暗転した後、最後にこんな文字が浮かび上がったと言います。

「戻れない」

それを聞いた瞬間、全身に寒気が走りました。あの廃道が何だったのか、あの先に見たものが何だったのか、未だに説明はつきません。ただ一つ言えるのは、二度とナビに頼ってあのような道には入らない、ということです。



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