目次
【プロローグ】
私はデイトレーダーとして家で株式取引をして生計を立てている。職業柄、家からほとんど出ない生活だ。友人もほとんどいない。
そんな私にとって、ペットのハムスターが唯一の友人だった。名前は「チクワ」。丸々とした体と愛くるしい目、そして小さな手でエサを持って食べる仕草は、私の心をいつも癒してくれた。
しかし、チクワは2年数か月で寿命を迎えた。
【最後の日々】
亡くなる少し前から、チクワの足腰は弱くなり、毛並みもぼさぼさになっていた。転ぶたびに何度も立ち上がろうとする姿は痛々しくも愛おしかった。
そんな彼に少しでも喜んでもらおうと、私は自分の食事からウィンナーのかけらや焼き魚の端、パンくずなどを分け与えていた。
本当はハムスターに与えてはいけないものもあったかもしれない。それでも、夢中で食べる姿を見ると、どうしても止められなかった。
亡くなった日は、とても静かだった。いつもなら回し車が軋む音や、エサをかじる音がしていたのに、その日はただ静寂だけが広がっていた。
【埋葬】
チクワの亡骸は、庭の一角に丁寧に埋葬した。線香を焚き、手を合わせながら「ありがとう」と何度も呟いた。
それでも、日々の生活でふとした瞬間に彼のいないことを実感することが増えた。食事中、ついおかずを分けようとし、彼がもういないことに気づく。
「チクワ、お前はどうしてるかな…」
そう呟く日々が続いた。
【奇妙な現象】
そんなある日、不思議なことが起きた。
取引が終わり、ふとデスクに戻ると、テーブルの上に小さなパンくずが散らばっていた。私は慌てて掃除をしたが、次の日も同じ場所にパンくずが落ちていた。
「何これ…?」
自分が食事中にこぼしたのかと思ったが、それにしても量が多い。さらに奇妙なのは、そのパンくずが、チクワが好きだったパンと同じ種類だったことだ。
【温かな気配】
ある晩、夢を見た。そこには元気だった頃のチクワが現れ、小さな手で何かを一生懸命に押していた。
夢の中で私はチクワに聞いた。
「お前、何してるんだ?」
すると、彼は振り返り、くるりとしっぽを振った。そして、小さな声で「お返し」と言った気がした。
【気づき】
目が覚めると、胸が温かくなった。あのパンくずは、チクワが私にくれた「お返し」だったのかもしれない。
それからというもの、私はパンくずが落ちていても掃除するのを少し後回しにするようになった。
「チクワ、ありがとうな。」
独り言を呟きながら、私はまた取引画面に向かう。心なしか、チクワが見守ってくれている気がして、取引もうまくいく日が増えた気がする。
【エピローグ】
チクワがいなくなっても、私は彼の温かさを感じながら日々を過ごしている。
もしペットを失った後、不思議な出来事が起きたら、それはきっと彼らからの「お返し」かもしれない。
「大好きだったよ。ありがとう。」そんな気持ちを、彼らはちゃんと受け取っているのだから。
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