怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

亡きハムスターが教えてくれた小さな奇跡 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私はデイトレーダーです。基本的に家から出ることはなく、パソコンの画面に張り付いて生活しています。人付き合いもほとんどなく、ペットのハムスターだけが唯一の友人のような存在でした。

そのハムスター、名前は「シロ」と言います。小さな体にふわふわの毛、そして手のひらに乗せるとくすぐったい感触がたまらなく愛おしい存在でした。しかし、ハムスターの寿命は短いものです。2年と少しの時間を一緒に過ごした後、シロは静かに息を引き取りました。

シロとの最後の日々

晩年のシロは足腰が弱くなり、すぐに転んでしまうことが増えました。それでも頑張って私の手のひらに登ろうとする姿がけなげで、時には涙が出そうになりました。毛並みもぼさぼさになり、昔のような元気はありませんでしたが、それでも食べることは大好きでした。

本当は与えてはいけないと知りつつも、自分の食事から少しだけお裾分けすることがありました。ウィンナーのかけら、焼き魚のほぐし身、パンくず…。シロはそれらを一心不乱に食べ、まるで「おいしいよ!」と伝えるようにキラキラした目で私を見つめました。その姿を見るだけで、日々の孤独やストレスが和らぐようでした。

亡くなったとき、私は庭にシロを埋めて線香を立てました。静かな香りが漂う中、「もう触れることもできないんだ」と実感しました。

いなくなった日常

シロがいなくなった後も、つい癖でおかずを小さくちぎり、ケージの方向を見てしまう日々が続きました。空っぽのケージを見て「ああ、いないんだ」と気づくたびに、胸がきゅっと締め付けられるようでした。

「もう誰かを飼うのはやめよう」そう思いました。シロ以上の友人なんて、きっと見つからない。

小さな訪問者

そんなある日のことです。トレードの合間に台所で昼食をとっていると、どこからかカリカリカリという音が聞こえてきました。最初はパソコンのファンが鳴っているのかと思いましたが、音のする方を見ると、テーブルの上のパンくずを小さな野ネズミがついばんでいたのです。

驚いて固まりましたが、そのネズミは私をじっと見つめて動きません。ふわっとした体とつぶらな瞳が、どことなくシロに似ているように思えて、私は思わず「シロ…?」と声をかけてしまいました。

もちろん、シロが帰ってきたはずはありません。でも、そのネズミはしばらく私を見た後、まるで挨拶するように小さな頭を下げ、カリカリと音を立てながら再びパンくずを咥えて消えていきました。

繰り返される訪問

それからというもの、その野ネズミは時折姿を見せるようになりました。私が食事中にふと現れ、パンくずや魚の小片をついばんでいきます。どこか懐かしさを感じるその姿に、私は少しずつ癒されていきました。「きっとシロがどこかで見ていて、送ってくれたんだろう」そんな風に思えるようになったのです。

シロからのメッセージ

ある日、ふと庭に行くと、シロを埋めた場所に小さな白い花が咲いていました。その花はまるでシロの毛並みを思わせるような純白で、風に揺れていました。線香の香りとともに、その花を見ながら静かに手を合わせると、心がふっと軽くなった気がしました。

「ありがとう、シロ。また会おうな。」

そう呟きながら、その日も私は野ネズミが訪れるのを楽しみに、パンくずをそっと準備するのでした。



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