数年前の話です。これは、誰にも話したことがない不思議な体験です。夢だったのではないかと何度も自分に問いかけましたが、それでも「確かに現実だった」と感じる部分もあり、今回この場を借りてお話しします。
目次
いつもの景色に「ないもの」がある日
私は、住宅街の高台に住んでいます。私の家からは山々が見え、その先にほんの少しですが富士山の頭が顔を出しています。朝、通勤で家を出るたびに富士山を見るのが日課でした。
ところが、ある日突然、富士山が見えなくなりました。最初は「雲がかかっているのだろう」と思いました。実際、曇っている日は富士山が見えないことも珍しくありません。しかし、翌日も、その翌日も晴天なのに富士山はどこにも見えませんでした。
「何か変だな」と思いつつ、ネットで調べることにしました。
「富士山が存在しない世界」
「富士山 消えた」「富士山 今どうなってる?」と検索しましたが、結果は衝撃的なものでした。どれだけ調べても富士山に関する情報が一切出てこないのです。代わりに「日本一高い山」として出てきたのは、見たことも聞いたこともないカタカナの名前の山でした。
その山の名前がどうしても思い出せないのですが、画面には写真も載っていて、富士山とは全く違う形をしていました。富士山特有のなだらかなシルエットではなく、どちらかというとゴツゴツした山肌を持つ岩だらけの山だったように記憶しています。
不安になり、家族や同僚に「富士山って今どうなってるんだろう?」と聞いてみました。すると彼らの反応は全く予想外のものでした。
「富士山?そんな山聞いたことないけど。」
「日本一の山は○○山(カタカナの名前)だよ?」
まるで富士山という存在自体が消えたかのようでした。
現実と夢の狭間で
その後も1週間、富士山は姿を現しませんでした。通勤途中で何気なく見ていた高台からの景色も、富士山があった場所にはただ青空が広がるだけ。ネットで検索しても、テレビで山の特集を見ても「富士山」という名前は一切出てきません。
「自分の記憶違いなのだろうか?」と疑いたくなる一方、富士山の形や、登山した時の記憶が鮮明に浮かんできました。「絶対にあったはずだ」と確信しているのに、周囲の反応はそうではありませんでした。
戻ってきた富士山
その奇妙な状況が続いたのは、約1週間ほどだったと思います。そして、8日目の朝、いつものように家を出て高台から外を眺めたとき、富士山はそこにありました。何事もなかったかのように、いつもの場所にちょこっと頭を見せていたのです。
慌ててネットで調べると、富士山に関する記事や写真が山のように出てきました。家族や同僚に再び「富士山ってさ…」と話を振ると、「当たり前だろ、日本一の山なんだから」と返されました。
あの1週間の出来事について触れると、みんな一様に「何を言っているんだ?」という顔をします。富士山が消えていたことを覚えているのは、私だけでした。
夢だったのか、それとも…
いまだに、あの出来事が何だったのか分かりません。夢だと言われれば、そうかもしれません。でも、私は確かに1週間、「富士山が存在しない世界」で過ごしました。その間に起きた出来事も、見たネットの画面も、全て現実だったように感じています。
富士山が戻ってきた今、あの1週間のことを証明する方法はありません。ただ、たまに高台から富士山を眺めるたび、あの「いなかった日々」を思い出して、胸が少しざわつくのです。
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