目次
【プロローグ】
空を見るのが好きだ。
青空、夕焼け、雨雲――1日として同じ空はない。その変化が、何気ない日常に彩りを与えてくれるようで、私は毎日少しだけ空を見上げる時間を大切にしていた。
だが、ここ最近、空に奇妙なものが現れるようになった。
【奇妙な雲の出現】
それはある夕方のことだった。
窓の外に目をやると、薄暮の空に一瞬だけ紫色の雲が浮かんでいるのが見えた。楕円形で縁がぼんやりと輝いている。
「あれ、何だ?」
目を凝らす間もなく、その雲はふっと消えた。気のせいだろうと思っていたが、それから毎日、似たような雲が現れるようになった。
黄色、黄緑、オレンジ――色も形も日によって違うが、共通しているのは数秒間だけ現れ、すぐに消えてしまうということだった。
【異変に気づく】
ある日、いつもより長くその雲を見ることができた。
その時の雲は円形で、中心が渦を巻いているように見えた。興味を惹かれた私は、スマートフォンで写真を撮ろうとした。しかし、シャッターを切る直前に雲は消えてしまった。
さらに奇妙だったのは、その後だ。スマートフォンの画面には、撮った覚えのない風景の写真が保存されていた。
そこには、見たことのない場所――高層ビルがねじれている街並みと、不自然に輝く植物――が映っていた。
【調査の始まり】
私はその現象について調べ始めた。「奇妙な雲」「色がついた雲」などで検索してみたが、該当する情報は見つからない。
唯一見つかったのは、ある匿名掲示板の投稿だった。
「空に一瞬だけ現れる奇妙な雲。それをじっと見続けると、別の世界が見えるらしい。」
投稿はそこまでで途切れており、それ以上の情報はなかった。しかし、その一文がどうしても頭から離れなかった。
【雲を追いかける】
翌日、私はさらに注意深く空を見上げていた。そして午後4時過ぎ、また現れた。
今度は赤紫色の雲。渦巻き模様がくっきりとしている。私は意を決して、雲をじっと見つめ続けた。
すると、視界がぼやけ、空が歪み始めた。そして次の瞬間、目の前に全く知らない景色が広がった。
【異世界の景色】
そこは現実ではありえない風景だった。空は深い金色をしており、地面には紫色の草が生えている。
遠くには大きな塔のような建物がそびえていたが、よく見るとそれは上下が逆さになっていた。何かが重力を無視して存在しているような世界。
その場に立ち尽くしていると、背後から声が聞こえた。
「やっと気づいたのか。」
【不思議な人物】
振り返ると、白いローブを纏った人物が立っていた。顔は影に隠れて見えないが、声はどこか懐かしいような響きがあった。
「これは…どこですか?」
私が尋ねると、その人物は静かに答えた。
「ここは、君が見落としてきた世界のひとつ。奇妙な雲を見続けた者だけが、こうして訪れることができる。」
「見落としてきた世界…?」
「君の現実と、ここは重なっている。けれど、多くの人は気づかない。その違和感を見つけた君だけが、この扉を開いたのだ。」
【戻る道】
人物はふっと消え、私は再び現実の空を見上げていた。
時計を見ると、わずか数分しか経っていない。しかし、あの異世界の記憶は鮮明で、幻覚だったとは思えない。
【エピローグ】
それからも私は空を見続けている。奇妙な雲が現れるたびに、その裏に隠された別の世界を覗き見ているような気がしてならない。
もしかすると、この世界にもまだ私たちが知らない場所や真実が隠されているのかもしれない。
もしあなたが空に奇妙な雲を見つけたら、じっと見続けてみてください。その先には、あなたがまだ知らない「もう一つの世界」が広がっているかもしれません。
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