雨の日、誰もが経験したことがあるだろう。
突然の土砂降りに傘を忘れ、ずぶ濡れになって途方に暮れるあの瞬間。
私もつい先日、そんな目に遭った。
でも、その日私を救ったのは、奇妙で不思議なお店だった――名前を「乾かし屋」という。
目次
突然の豪雨
その日は天気予報で晴れだと言われていたのに、夕方になって突如として空が暗くなり、土砂降りの雨が降り始めた。
会社の帰り道、私は傘を持っていなかった。近くに雨宿りする場所もなく、最寄り駅まで走っているうちに全身がびしょびしょになった。
ズボンが重くなり、靴の中まで水浸し。髪もベタベタで、まるで水槽にでも落ちたかのような有り様だ。
路地に現れた「乾かし屋」
駅まであと少しというところで、視界の端に奇妙なお店が見えた。
路地裏の一角、ポツンと佇む小さな店舗。暗い雨の中、その看板だけがやけに目を引いた。
「乾かし屋――500円であなたを完全に乾かします」
看板の言葉を見て、正直「怪しい」と思った。でも、背に腹は代えられない。このびしょ濡れの状態で電車に乗るのは耐えられないし、帰り道で風邪をひくのもごめんだ。
意を決して扉を押し開けると、中には年配の店主が一人だけいた。
驚きのサービス
「いらっしゃい、全身びしょ濡れだね。500円で全部乾かしてあげるよ。」
店主はにこりと笑いながら言った。
「本当に乾くんですか?」
私は半信半疑だったが、財布から500円玉を取り出し、店主に渡した。
「そこに立ってごらん。」
店内の中央に立つと、店主が手にした小さなリモコンのようなものでボタンを押した。
すると、足元から温かい風が吹き上がり、次の瞬間には全身がポカポカと暖かくなり、濡れていた服や髪が一瞬で乾いた。
「どうだい?気持ちいいだろう?」
確かに、頭の先から靴下の中まで、まるで新品のように乾いていた。
奇妙な違和感
すっかり感動してお礼を言い、店を出ようとした時、ふと気づいた。
「このお店、今までここにあったっけ?」
私はこの道を毎日通っている。でも、ここにこんなお店があった記憶は一切ない。
その疑問を店主にぶつけると、彼は笑いながら言った。
「乾かし屋は、困ってる人の前にだけ現れるんだよ。また雨に降られたら来な。」
消えたお店
翌日、気になって同じ路地を訪ねてみた。
しかし、乾かし屋はどこにもなかった。店があった場所はただの空き地で、看板も扉も消えていた。
あの体験が夢だったのか、それとも現実だったのか――いまだに分からない。
ただ、土砂降りに見舞われるたびに、またあのお店が現れるのではないかと思いながら、雨の日の街を歩いている。
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