目次
プロローグ
迷惑メールは日常的なものだ。広告や詐欺目的の内容がほとんどで、見慣れた人にとっては特に気にすることもないだろう。
しかし、ある日を境に私の受信トレイに届き始めたメールは、そんなレベルのものではなかった。内容は妙にリアルで、何より私と全く関係のない「誰か」の人生が書かれているのだ――。
第一章:最初のメール
最初にそのメールが届いたのは、2か月前だった。
件名は短く「助けて」。迷惑メールフォルダに振り分けられていたが、何気なく開いてしまった。
「お願いです。彼が戻ってきません。探しても探しても見つからないんです。助けてください。」
送信者の名前は「恵美」となっていたが、もちろん心当たりはない。私はただの会社員で、そんな内容の相談をされる覚えもない。
「何これ……。」
スパムかと思い、その場では削除した。しかし、このメールが「始まり」だったとは、まだ気づいていなかった。
第二章:増えていく奇妙な内容
それからというもの、毎週のように「恵美」からメールが届くようになった。
内容は徐々に具体的になり、妙に生々しい。
「彼の車を見つけました。助手席には誰かの髪の毛が落ちていました。でも、彼の姿はありません。」
「警察には相談しました。でも、誰も本気で聞いてくれません。どうしたらいいんですか?」
当然、私には返事をする気もなければ、関与する理由もない。ただ、文章の切迫感がどこか引っかかった。
「これ、誰に向けて送ってるんだ?」
第三章:全く知らない「彼女の世界」
メールを読んでいると、恵美という人物が全く知らない「誰か」と私の受信トレイを通じて繋がっているような感覚に陥った。
彼女の「彼」は失踪しているらしく、メールの中で少しずつ彼の行動や関係者の描写が増えていく。
「彼が最後に行ったのは、あのカフェでした。でも店員は何も話してくれません。」
「彼の上司は何か知っているみたい。でも、何か隠しているんです。」
読み進めるほどに、私は不気味さを感じ始めた。送信者も受信者も分からないメールなのに、まるで私がその物語の登場人物の一人になってしまったような気がするのだ。
第四章:メールの違和感
ある日、届いたメールの中に見覚えのある地名が記されていた。
「彼の車が見つかったのは、○○市の山道でした。」
その地名は、私が住む町の隣だった。これまでは全く関係のない話だと思っていたが、身近な場所が出てくると一気に現実味を帯びる。
「まさか偶然だよな……?」
胸騒ぎを感じながらも、私はメールを削除した。これ以上深入りするのは危険だと思ったのだ。
第五章:エスカレートする内容
しかし、削除してもメールは届き続けた。内容は次第にエスカレートしていき、まるで私が何か行動を起こすことを期待しているようなものになっていった。
「あの山道に行けば、彼の痕跡が残っているかもしれません。お願いです、確認してください。」
「あなたしか頼れる人がいないんです。どうか、彼を見つけてください。」
私はメールを読むたびにゾッとした。送信者が明確に誰かに向けて助けを求めているにも関わらず、それが全く知らない私に届いているという事実が恐怖だった。
第六章:突然の沈黙
1か月ほどして、ピタリとメールが届かなくなった。
「ようやく終わったか……。」
安堵しつつも、最後に届いたメールの内容が頭にこびりついて離れなかった。
「彼を探しに行きます。もう誰も頼れないから。」
まるで彼女自身が何かを決断したかのような文面だった。
結末:迷惑メールの正体
それ以来、恵美からのメールは一切届いていない。しかし、時折私は考える。
あのメールは一体、誰が送ってきたのだろうか。
「迷惑メール」だと言われればそれまでだが、あまりにも具体的で現実味のある内容だった。そして、最後に彼女はどうなったのだろうか――。
私はもう一度メールを確認する勇気がなく、今でも受信トレイを開くたびに不安を感じる。
もしかすると、またあの「恐怖の迷惑メール」が届くのではないかと――。
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