私はスピリチュアルなものに興味があるわけでもなく、霊感があるタイプでもない普通の人間です。ただ、あの日体験したことだけは、今でも説明がつかず、時々思い出しては不思議な気持ちになるのです。
目次
祖母の部屋
話は数年前、祖母が亡くなってしばらく経った頃のことです。
祖母は生前、古い日本家屋に一人で暮らしていました。昔ながらの畳の部屋と、天井から下がる裸電球。懐かしいけれど、どこか薄暗い雰囲気の家です。
四十九日も過ぎた頃、父から「祖母の家を片付けるから手伝ってほしい」と頼まれ、私は久しぶりに祖母の家へ行くことになりました。
不思議な空気
祖母の部屋に入った瞬間、なんとも言えない感覚に包まれました。
懐かしい祖母の匂い――お線香、古い木の香り、それらが混ざり合った独特の空気です。でもそれだけではありません。
「誰かいる?」
そう思わせるほどの“気配”がありました。
畳に落ちていたもの
片付けを始めてしばらく経った頃、私は畳の隙間に何かが挟まっているのを見つけました。
引っ張り出してみると、それは小さな紙切れでした。
紙には、祖母がよく使っていた筆跡で、こう書かれていました。
「いつも見ているよ。心配しなくていいからね。」
祖母は筆まめな人で、手紙や日記を書くのが好きでした。でも、この紙切れが何なのかは分かりません。日記の切れ端? それとも何か書き置きだったのでしょうか。
「……おばあちゃん?」
誰もいない部屋で、思わず口に出してしまいました。
誰もいないはずの部屋
その時、不思議なことが起こりました。
背後から、ふわりと風が吹いたのです。窓は閉まっているのに、カーテンが微かに揺れていました。
そして、仏壇の方に目を向けると、祖母の写真が微笑んでいるように見えました。
「……気のせいか。」
私は自分にそう言い聞かせ、片付けを続けることにしましたが、その日、何度か同じ風がふわりと吹くのを感じました。
帰り際の出来事
片付けを終え、帰る準備をしていると、ふと、祖母が使っていた小さな座布団の上に何かが置いてあるのに気づきました。
それは、祖母が生前いつも身につけていた手鏡でした。
「これ、さっきまでなかったよな……。」
私は確かにその座布団を何度も動かしていました。でも、手鏡がそこにあった記憶はありません。
手鏡を手に取ると、鏡面には薄く、こう書かれているように見えました。
「ありがとう。」
一瞬の出来事でした。次に見た時には、文字は消えて普通の鏡に戻っていました。
祖母からのメッセージ
それ以来、祖母の家には行っていません。でもあの時感じた気配、風、そして「ありがとう」の言葉――あれはきっと、祖母からのメッセージだったのだと今でも思います。
スピリチュアルな体験だと言われればそれまでですが、祖母が私に「いつも見守っている」と伝えたかったのではないでしょうか。
あの不思議なできごとは、今でも私の心を温かくしてくれる、大切な思い出の一つです。
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