目次
不思議な指輪との出会い
私は普通の会社員だ。毎日同じ時間に家を出て、同じ電車に乗り、同じデスクで仕事をする。そんな退屈な日々を送っていた。
ある休日、何気なく立ち寄った骨董品店でそれを見つけた。
ショーケースの片隅にひっそりと置かれていた、古びた銀色の指輪だ。飾り気はないが、中央には小さな青い石がはめ込まれている。
「お兄さん、それ気に入ったのかい?」
店主は笑いながら言ったが、なぜかその指輪がどうしても気になり、購入した。
値段はたったの500円。
不思議な力
家に帰って指輪を手に取り、何気なくはめてみると、驚くことが起きた。
「……なんだこれ?」
頭の中に、微かな声や音が聞こえ始めたのだ。窓の外を見れば、今まで聞こえなかった鳥の囀りや遠くの工事の音まで鮮明に聞こえる。
試しに街を歩いてみると、人の小さなつぶやきや、物音までもが不自然なくらいクリアに聞こえてくる。
「これ、まさか人の“気持ち”が聞こえるのか?」
気づけば、私はこの指輪が持つ“人の心の微かな声”を聞く力を手に入れていた。
指輪に救われた日々
最初は怖かったが、この指輪のおかげで人との関係が少し楽になった。
・上司が機嫌を損ねそうなタイミングが分かり、失敗を避けることができる。
・同僚が本当は困っていると分かり、助けることができた。
・電車で知らない人が落ち込んでいる理由をなんとなく察し、席を譲った時、涙ながらに感謝されたこともある。
「この指輪、すごいな……。」
それ以来、指輪は私にとって“宝物”となり、外出する時は必ずつけていた。
ある日、指輪が壊れる
しかし、そんな日々は長くは続かなかった。
ある日、仕事帰りにいつものように人の声を聞きながら歩いていると、不意に耳が「キーン」と鳴り、頭が痛くなった。
「うっ……!」
指輪の石が突然、チリッと小さく音を立てた。そして――青い石に小さなヒビが入っているのが見えた。
家に帰って改めて指輪を見つめると、今まで感じていた不思議な力がスッと消えてしまっていることに気づいた。
次の日には、その青い石は粉々に砕けてしまった。
失われた力
指輪が壊れてから、人の声や気持ちはもう聞こえなくなった。
最初は心細かった。上司の機嫌を読むことも、同僚の本音を察することもできない。ただ、以前と同じように普通の会社員として過ごすしかなかった。
しかし、ふと気づいたことがある。
「あれ? なくても、ちゃんとやれてる……。」
自分が指輪に頼りすぎていたことに気づき、少し恥ずかしくなった。指輪があったから人に優しくできたのではなく、本当は最初から自分にもその力はあったのだ。
宝物の記憶
今でも、机の引き出しの中には壊れた指輪が大切に保管されている。
あの指輪のおかげで、人の気持ちに寄り添うことの大切さを学んだ。そして、不思議な力がなくても、気持ちを思いやることは誰にでもできる――そう信じて生きている。
「不思議な力がなくなっても、それを忘れなければ、人は少しずつ変わることができる。」
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